じゅ

パラダイス・ヒルズのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

パラダイス・ヒルズ(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

こんなんはなんぼあってもいいんよ。

ユマは没落した上流階級の家の娘で、富豪と結婚させられるのを拒んで送り込まれた先がパラダイス・ヒルズという孤島の人格矯正施設で、その実この施設では"患者"の治療ではなく一挙手一投足を隈なく観察・記録してその人物のコピーを生成していましたと。コピーとはつまり高い金で雇った庶民を患者の外見を瓜二つに整形して声帯まで改造して、"患者"の挙動を体に叩き込むこと。あとはコピーを"退院"させて帰った先で矯正された人格を演じさせる。
コピー元はどうなるかというと、パラダイス・ヒルズの責任者(ミラ・ジョヴォヴィッチ)がなんと若い生き血を啜る化物で、コピー元の患者の生気を吸って殺してましたと。


地獄先生ぬ〜べ〜にそんなんいなかったか。千鬼姫っていう大昔に若い女の子の血を溜めた風呂に入ってたみたいなやつ。稲葉郷子に「守護霊交代!」ってやって憑いてくるやつ。
若さを至上の価値とすると途端に狂気を生み出せるので良い。
ただまあ本作に関してはそこまでせんでもよかったかなあと個人的に思う。普通にコピー元を職員に殺させて島のどこか秘密の場所に棄てるとかの方が好きだったかも。ユマが見つけて、名前忘れたけど脱出計画を立てた矢先に先に"退院"になった大物シンガーの屍もそこに積み上がってる、みたいな。それこそミラ・ジョヴォヴィッチが出てた『バイオハザード』シリーズのどれだったかでアリスのコピーの屍体が大量に穴に放り込まれてたかんじの。
なかなかくっ付かない2要素をくっ付ける試み自体は好きなんだけど。


あとはまじで好き。目にも心にも優しい楽園みたいな島に何の脈略もなく急にいる始まりとか、マドモアゼル云々言ってユマとかユーとかクロエとかを客人のように扱うスタッフが島に侵入者が来る緊急事態に見舞われた途端に粗暴になって闇が垣間見える瞬間とか、だんだんやり口が強引になってくかんじとか、脱出を試みて逃げ込んだ地下に顔に包帯を巻いた人間がうようよいて包帯の下から自分らと同じ顔が出てくるところとか、ユマとユマのコピー先のアナが協力して脱出してユマを施設に送り込んだ結婚相手を殺す締め方とか。
あとエマ・ロバーツの声とか。
ボートを漕いで文明の光が灯る本土が見えたカットも名作『エヴォリューション』のラストカットみたいで地味に好き。
あとエマ・ロバーツの声。

まあただ施設がユマのまじの彼氏を買収してたのがユマにばれたから、彼女が百合展開になってたあの人から託された安全な場所ってところには独りで行くのかなあ。ユーもクロエも生きて出られなかったし。向こうで上手いことやってほしい。
アナはそのまま結婚式当日に婚約者を殺された悲劇のヒロインであるユマとして生きてくんだろうか。今のところユマの母親にも入れ替わりがばれてないし。それはそれで大変そうだ。そんなんやるやつ『フェイス/オフ』のケイジとトラボルタくらいのもんだろ。(ユマの顔のアナがサンにナイフを突き刺して「DIEEEEEE!!」って叫ぶ光景が頭の中に流れてる。)


一方は上流階級から孤独な庶民へ。他方は庶民から賑やかな上流階級へ。大変だろうけど各々がんばってくれ。
じゅ

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