原作を読んで面白かったので、続けて映画も鑑賞。なので、原作との比較から。
主人公のちひろを演じる芦田愛菜ちゃんの演技がとってもよかった。原作は会話がメインだったので、行間を読んで、ちひろの心中の葛藤や揺らぎに想像力がはたらいた。その行間を、愛菜ちゃんが微妙な表情や視線で表現していて、原作をしっかり読み込んで役作りをしてるんだろうなぁと感心。
お母さんとお父さんは、人物像がほとんど描かれていないので、原田知世と永瀬正敏のお二人はもったいないなぁと思った。二人が演じるんだったら、両親のサイドストーリーが観たかったなぁ、と。
ちひろの両親のいつもの服装といつもの儀式(信仰上の)。映像化すると、想像を超えていてゾッとした。
物語の最後、星空に包まれながら、親の庇護の下から旅立とうとするちひろは、何を思ったんだろう。何を感じたんだろう。
両親の、世間とは大きなズレのある信仰のために、家庭と世間とのギャップに何とか折り合いをつけながら生きてきた。“私のために”必死になったが故の両親の生き方(信仰)を、ちひろは否定できなかったのだろう。
両親は自分で選んだ信仰だけれど、ちひろは親に従い、半ば強制的に、物心ついた時には信仰を刷り込まれていた。それは問題なのだろうか。
身近なイスラムの人も背景は同じで、親から受け継いだ信仰だけど、彼らがちひろのような心的葛藤を抱くことはないように見える。家族だけではなく、その周囲を取り巻く社会にも同じ信仰をもつ人たちが多くいるから?だけど、外国である日本では、その信仰がマイノリティになる。もしかしたら、彼らの心中に、母国では湧くことの無かった疑問や葛藤が生まれているのかもしれない。
人にとっての信仰とは何だろう。僕は特定の宗教を信仰しないけれど、自然やご先祖さまには畏敬の念を感じる。神社を参拝すると姿勢が正されて、心が整う感じがする。それも信仰だと思う。
再び最後の場面
ちひろは、自分にとって、その信仰がよきものかどうか、星空(天)にその問いを投げかける。寒くてもホテルに戻ろうとしない両親には、その答え、ちひろの選択を一緒に受け止め、尊重しようという“覚悟”があったんじゃないだろうか。それは、原作を読んだときには感じなかったコトだった。
やっぱり、原田知世と永瀬正敏もすごかった。