ひこくろ

セイント・モード/狂信のひこくろのレビュー・感想・評価

セイント・モード/狂信(2019年製作の映画)
4.3
信仰にまつわる、とても奇妙でグロテスクで残酷な映画だった。

主人公のモード(ケイティ)は神の存在を心から信じている。
が、彼女の信仰は聖人のようなものではない。
彼女が信仰にすがるのは、たとえようもないほどの孤独感とさびしさ、そして自分に対する無力感からだからだ。
そして、信仰として現われる神の存在も、官能や痛みを伴う自傷行為だったりする。
彼女にとって信仰は絶対的なものだが、それは狂気に近いものだ。
だから、誰にも伝わらないし、共感も得られない。

魂を救いたいと奔走するのに、その思いが伝わらない。
彼女自身も、信仰によって救われるのではなく、追い込まれていく。
この描写がえげつなくて、観ていて落ち込むぐらいだった。
特に、彼女がアマンダに解雇され、孤独に苛まれて男と関係を持つシーンは、泣きたくなるくらいに苦しかった。
と同時に、救いにならない信仰とは、なんなんだろうとも思わされた。

冒頭のあまりにも怪しげな映像から、こうなるのは想像が付いたが、それでもショックは隠せない。
ここまで、報われない、救いのない、絶望的な信仰があっていいのだろうか。
やりきれなくなるほどに後味の悪いラストシーンも同様。

心の底から気分が落ち込むような映画だと思った。
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