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プロミシング・ヤング・ウーマンのniのレビュー・感想・評価

5.0
出来るだけ多くの人に、特に男性に観て欲しい作品です。
そしてなるべく何も見ずに読まずに、どんな作品なのか知らずに観に行って欲しい。今のところ、2021年ベストです。素晴らしかった。

この作品のタイトルである「Promising Young Woman」とは、アメリカの大学で実際にレイプ事件が起きた後の裁判で、裁判官が「Promising Young Man」の未来を潰せないと言い、犯人の男の刑は、検察の要求よりだいぶ軽くなったという実際に起きたことへの皮肉から来ているそうだ。(パンフレットより)
将来有望な男の未来は潰してはいけないのに、女ならいいのか?こんなに絶望的なことが、実際に起こったと知って本当にショックだったし、悲しかったし、許せないし、絶望的な気持ちになる。

(2回目:7/29)
(3回目:8/28)

※以下結末に触れます





結局キャシーは、肉体的な力では男性に勝てなくて殺されてしまった。予想とはかけ離れた結末であったし、そのシーンを観た時、深い絶望と悲しみに苛まれたけど、最後に男がきちんと罰せられて少し救われた。そして映画を観終えて、ぼんやりとこの結末について考えていた時、彼女が殺されたのも全てキャシーの戦略であった可能性はないのか、と思った。わざと片方だけ手錠を少し緩くしておいて、アルモンローに自分を殺させた可能性はないのか。あまりに悲しい結末であったけど、キャシーは自分の命を犠牲にしてでも、親友のニーナに対して性的暴行を加え、自殺に追い込んだ男を罰したかったのではないか。それに、キャシーが置かれていた環境が酷すぎた。完璧に見えたボーイフレンドは、実は昔、ニーナへの強姦を煽った男であったのだし、絶望に苛まれていたと思う。これが彼女の策略であったなら、弁護士の元に手紙が届いたこと、ちょうどアルモンローか逮捕された時にライアンに送信予約がされていたメールが送られてきたことなど、筋が通ると思う。

昔はお金を貰って、性犯罪の抹消に関わった(詳しくは忘れてしまったけど、、)弁護士、ニーナへのご強姦を煽ったライアン、そして張本人であるアルモンロー、全員過去に悪いことをしたという点では同じだ。ただ、弁護士とあとの二人では「過去を恥じて反省できたかどうか」が大きく違う。変わる者、変わらない者の違いがはっきり出ていたと思う。変わらない者はなんというか、哀れだった。ライアンなんて一見完璧なのに、キャシーに本性がバレた時は自分が子供だったと言い訳し、さらに彼女が行方不明になった時も、彼女の行先について何も思い当たらないとさらっと嘘をついてしまうクズっぷりが、忘れられない。
そしてキャシーの父親。娘がいなくなったら自殺を真っ先に疑っていた。過去に先程あげた彼らのような罪は犯していなくても、立派に最悪だった。この作品に出てくる男は弁護士が一番まともなのでは?彼も彼だけど、他が酷すぎる。でもこれが現実であるのかな。いい人もいるって分かってるけどね。

そして私はキャシーの復讐が大好きだった。キャシーの敵は性犯罪に関わった者共だけでなく、それを見なかったことにする女たちもであり、これは今作の素晴らしいところであると思う。男=悪い 女=悪くない みたいな描き方をしていないところが素晴らしいよね
キャシーの敵とはすなわち、女性蔑視を助長するもの全てであり、犯罪に関わらなければ許される訳では無いのだ。煽るのも、見なかったことにするのも立派な罪である。やっぱり、この煽りを罪であると描いた「告発の行方」はすごい映画。80年代にそんな映画が作られていただなんて!

キャリーマリガン、今まで彼女の作品は何作か観たことがあったけど、そのイメージとはかけはなれていました。キャシーはキャリーしか考えられない。演じてくれてありがとう😭(誰) 低い声と歩き方が最高だった😭

個人的にはアカデミー賞作品賞と主演女優賞もこの作品に撮って欲しかったです、ノマドランドも素晴らしかったけれど。今のところ今年1の素晴らしい作品。
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