空海花

プロミシング・ヤング・ウーマンの空海花のレビュー・感想・評価

3.9
“プロミシング・ヤング・ウーマン”
明るい未来が約束された若い女性

アカデミー賞脚本賞受賞、5部門ノミネート。
監督賞でのイギリス人女性のノミネートは史上初。
女優でもあるエメラルド・フェネルの長編監督デビュー作。
キャリー・マリガン主演。

元医大生の前途有望だったはずの主人公
キャシーが繰り広げる
“予想を裏切る復讐エンターテイメント”
そう銘打たれたこの物語。
観始めたら正直意外というよりも
こうなっちゃったらいやだな、と思う方へどんどん話が進んでいく感じだった。

冒頭の彼女の手腕は鮮やかなようで
不穏な違和感はずっと纏わり付く。
タリーマークの筆圧やペンの色
血のようなホットドッグのケチャップ。
男たちがビビってしまう様は確かに痛快かもしれないけれど…
美しい背景やファッション
彼女を中心に据えるカット
男を教育する復讐の天使かはたまた堕天使か。

ポップでビビッドな色彩と
アンティークさが混在した画面が
ファンシーさと不安定さを表現する。
ピンク色の電話機を可愛いと思わせて
両親からのプレゼントも同じ色という皮肉。


以下内容触れていくので注意⚠️


彼女の憎しみは男だけに向いている訳ではないのはすぐにわかる。
レイプカルチャーという忌むべき態度。
暴力は見せない。レイプの言葉さえ出ない。
女の復讐はそこじゃないとでもいうように。
クレバーな彼女は、その間も相手を見極めるように見つめている。
同じ辛さを精神的に与えること。
ただ常に策は別に用意していることが窺える。
何食わぬ顔を、見極めた先に。

彼女の演技がすごいからって
男はあんなに簡単にビビるものなのか?
この違和感は正しかった。
後になってわかる。
あれが唯一の暴力シーン。

恐怖とは違うかもしれないけれど
“力”に懸念はあった。
最後に彼女が準備していたのは…

パリス・ヒルトンが流れるパート
ニーナの母親の言葉が
むしろ暗示させる。
堕ちて同調してしまう女性性。

それでも彼女の奥底に一貫したものを感じないでもなかった。
が、やりきれないし、スッキリしない。
ネックレスの欠片。
後味の悪さはポップな甘さも一役買っているかもしれない。


ネタバレコメントあり

2021レビュー#139
2021鑑賞No.298/劇場鑑賞#44
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