TaiRa

プロミシング・ヤング・ウーマンのTaiRaのレビュー・感想・評価

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レイプ・リベンジ映画の枠を利用しながら、そのジャンル自体への批評も込めたビターな作り。

このジャンルが持ち合わせるポルノ性に対し、フェミニズムの視点で繊細に作られている。省略演出によってあらゆる暴力をポルノ的に「消費」させない。省略が想像力を働かせるので、より一層恐怖を感じさせ、その暴力性を痛烈に訴える。終盤、唯一剥き出しの暴力が映され、そのグロテスクさが際立つのも上手い。美術や衣裳、撮影を使った主人公に対するイメージの付け方も巧み。言葉を必要以上に使わずに、ただ主人公が男を「見る」だけで、この映画が描きたい男性性の醜悪さが滲み出て来る。この直接的な言葉を用いない演出が、ラブロマンス要素にも応用されるのが出色。どの場面においても女たちは必要以上に言葉を使わず、逆に男たちは必要以上に言葉を使う。物語のピークで流れるブリトニー・スピアーズの「TOXIC」は歌唱を廃したアレンジになっていた。ポップカルチャーの引用としては、レイプ・リベンジ物の応用である『キル・ビル』を感じさせる部分もあれば、性被害者女性による「善良な男」への復讐を描いた『オーディション』を踏襲した部分もある。Jホラー的には、それを見てしまったら人間として一線を越えてしまう「映像」の存在というのが『蛇の道』っぽい。実際の悍ましい映像が全く見せられないのも含めて。『ベリー・バッド・ウェディング』の辛辣な引用から、『ハングオーバー!』や『スーパーバッド』まで、男同士のイチャつきに女を使うコメディ全般への批評も込められていて身につまされる。
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