ちろる

プロミシング・ヤング・ウーマンのちろるのレビュー・感想・評価

4.1
クラブにて泥酔するキャシーことカサンドラ・トーマスが描かれて始まる。
キャシーは酔った女性をお持ち帰りしようとする男性をターゲットに「お仕置き」をするのが日課となっていたが、その彼女の目的とは??

世の中から『デートレイプ』が無くならない理由は、その言葉の軽さとは引き換えに被害者側のダメージとのその言葉の軽さに高低差がありすぎることが、原因にある。
女性軽視のバカな男が、デートの時に「ちょっと嫌がられたけどやっちゃったよ。」と仲間に武勇伝のように語り、やがてそれすら忘れていく。
された側は性的なショックをそこで抱えたまま時が止まったまま相手の男を恨むのだが、男としてはその過去を責め立てられても「若気の至り」でしかなく、そんな酷い事をした意識もないままにいつのまにか平気な顔して良い旦那となり良いパパとなる。

そんな事許されていいのだろうか?

これは、そんな『デートレイプ』の被害で命を落とした女性の親友が、仕掛けた一世一代の大トラップ。

キャシーのターゲットは親友を追い詰めた「ニーナ事件」をゴシップのように広めた同級生の女マディソン、関係者を擁護した学部長ウォーカー、隠蔽した弁護士グリーン、そして事件の主犯であるアル・モンローの4人。
軽快という言葉が正しいのかわからないが、実に見事にバッサバッサと事件の犯人たちを切り刻んでいく。

そしてバカたちを切り刻みながらも決して説教臭いことは入れ込まず、ブラックユーモア全開にして女性差別へ切り込んで、エンタメ映画として仕上げているところはさすが。
愛やら希望やらそんな甘ったるいもんでコーティングして終わらせちゃいられない、今も昔も同じく進行形で起こる『デートレイプ』、許すまじき!と力強く訴えかける「怒り」に満ちたエネルギーでとんでもない後味を残します。

この作品、アカデミー賞受賞した脚本がとにかく素晴らしいのですが、それに加えてなんと言っても、ヒロインキャシーを演じたキャリー・マリガンのこれまでのガーリーでクラシカルなイメージとは180度角度を変化させた、捨て身のクレイジーな怪演が印象深い作品となっていた。
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