ゆかちん

プロミシング・ヤング・ウーマンのゆかちんのレビュー・感想・評価

3.2
おおお…と、思わず唸った。
観終わった後の感想で、その人の本質が見えてきそうな作品だなぁ。
これはアカデミー賞とか色々取るのわかるわ〜て。


カフェで働くキャシー(キャリー・マリガン)は、夜な夜なクラブへ出向き、酔ったフリをして、お持ち帰りして手を出してくる男たちに制裁を加えていた。
医学部に進学し、極めて優秀で前途有望な若い女性だった彼女は、親友ニーナが同級生に襲われた事件によって人生が一変し、無気力に暮らしながら復讐心と絶望感を募らせ、こんな行動をしていた。
そんなある日、キャシーはかつての同級生であるライアン(ボー・バーナム)と偶然再会する。これをきっかけに、キャシーはその事件に向き合うことにーーー。



★この作品を見て思ったのは…

①全方位に問いかける作品だなぁと。
強姦事件の話だけど、イジメとかも同じこといえるなぁと。
直接の加害者は勿論悪いけど、傍観者も罪は無いと言えるのだろうか…?
胸に手を当てて振り返ってみては…??
そして、その罪の意識はある?反省してる??僕は私は関係ないと片付けて、本当にそれでいいの??
この点については、性別年齢が何であれ、誰しも顧みる必要があるのではというような問いかけを感じた。
だから、女性VS男性という単純に図式化してしまうのではなく、女性による同性に対する同調圧力や、罪なき傍観者に対してキャシーは制裁を加える。こういう見て見ぬ振りをした者たちまでも対象とした復讐劇となっているところに、この全方位への問いかけを感じた。


②女性の被害
これは男女によって見方変わるのかな。
大体こういう事件あったとき、加害者側の主張は、同意があったという。
それホンマか??そんなんどうとでも言えるくないか???
「酔っているから」「抵抗しないから」「露出が多いから」「遅い時間やこんな場所に一人でいるから」…痴漢や性犯罪者は、動機としてこういう理由を挙げるけど、こんな言い分がまかり通っていいはずないよね〜。
ほんまに同意してることもあるやろけど、それなら訴えられへんやろがい。
ハニートラップもあるんかもやけど、そっちを優先すべきではないやろ。

そして、この映画の事件はおそらく本人の意に反してお酒を呑まされたり、薬を入れられてた可能性が高い。これは立派な犯罪。こういうのホンマ厳罰にしてほしいですね〜。
なんか、好きだから…とかじゃ無くて、根本的に相手へのリスペクト無く見下してるからやってるというか、人権侵害的な胸糞感があるね。。


③あのラストにどこかスッキリして腑に落ちた。
人によったら後味悪いと思うだろうけど、私は、キャシーはなんて頭良いんだ!て感心してしまった。
だって、多分、実際のところ、キャシーがアルへの復讐を遂げたとしても、恐らく警察はキャシーを精神異常者として事件を片付けてしまう可能性がある。まだ逃げ切ろうと色々手を回す可能性がある。
つまり、アルを罰するためには、キャシー自身がアルに殺されなければ成立しない形になっているんじゃないかなと。殺人罪なら逃げられないよね、一生背負うことになるよね、て。
それをわかって、あの行動を取ったのかなぁ〜と。アルに反撃されたとき抵抗してたけど、他の時とは打って変わって弱々しかった。
実際、どう頑張っても女性と男性は体力が違いすぎて勝てない虚しさ、だからこういう犯罪が起きてしまうのだ、というのを表したいのもあったんやろけど、一方で、キャシーは覚悟してたのでは、と。
そこから、最後にタイトル的に出てきた復讐の5人目は、結果としてニーナを死から救うことができなかったキャシー自身が罰を受けたってことなのかな〜と。ニーナのお母さんに救えなかったことで自分を責めてると言ってたし。
そう考えると、なんと見事な復讐やろうと思ってしまった。。。


…てのが大方の感想。

★キャシーによる相手の許せないポイントと復讐について。
①マディソン
ニーナのことを知っていながら止めようとせず、私も酔ってて覚えてない、酔ってたから悪いんじゃないの?なんて言っちゃう。
そして、学生のノリだし〜みたいな感じで、すっかり忘れて自分は結婚して人生の成功者として平然と暮らす。
→自分が酔い潰れて目が覚めた時に見知らぬ男性といたら、「酔ってたから悪いんじゃないの?」と言える??

②ウォーカー学部長
ニーナの事件についての訴えを証拠不十分として揉み消した。
証拠不十分で前途有望な青年の未来を潰すわけにはいかないと言う学部長。
これに対してキャシーは「あなたは正しい。前途有望な青年の人生を台無しにするわけにはいかない。でも前途有望な女性は?」
いやホンマそれ。
疑わしきは罰せずというより、疑わしければ「男性は」罰しないてことですよね?て。
→娘を男性のところへ連れて行った話をして(うそ)狼狽させる。「自分の愛する人だったらどうするの?」という問いかけで顧みるよう促す。

③ジョーダン弁護士
アルの事件をもみ消し、泣き寝入りさせようと動いた当時の弁護士。
キャシーは復讐のつもりで訪れるが、ジョーダン弁護士は弁護士活動を休業し、家に引きこもっていた。
そして、キャシーの訪問を待ち侘びていたかのようで。
なぜなら、彼は自分の行動を心から悔いており、ひたすら自分が許せないと追い詰め不眠症にもなっていた。
彼のその姿をみたキャシーは、彼の贖罪を認め、復讐を辞め、彼を許すという。
そして、最後、自分の復讐の完成をジョーダン弁護士に託した。

キャシー、復讐するといっても暴力とかせえへんねんよな。
多分、夜な夜な男の人にお持ち帰りされにいって制裁をしてるといっても、お前何しとんねんと問い詰めるような、自分の行為がどういうのかをわからせる感じやし。
キャシーは関わる人を何があっても復讐したいとかじゃなく、そこに何も感じてないから復讐してるんやろな〜と。ある意味倫理観あるし、とても冷静だよな。
彼女が天使に見えるような演出もちょこちょこあるのは、復讐の天使って感じなのかな。


④アル
加害者本人。
こいつはホンマ許せんよな〜。学生時代そんな酷いことしといて、ケロッと忘れたかのようにモデルの彼女にプロポーズして成功した!彼女を愛している!と抜け抜けと申す。
はあ?と言いたくなっちゃう。
まあ、好きな人は特別だけど、そうじゃない人はどうでもいいんだろうね。
でも、どうでもいいからといって、そんなことしていい理由はないよな??どうでもいい人は殺していいとかないよな??同じだぞ?

まあ、アルこいつクソやなと思ったのは、キャシー殺しといて隠蔽したこと。
これは隠蔽を持ちかけた友達が悪いんやけど。多分、ニーナのこともこの友達が噛んでるんやろな。
自己防衛を図り、自分の罪と向き合わない罪深さ。
良心の呵責はないのか、平気で自分はいい人生を送ろうとするという。
んー、ずる賢いやつはこういうもんで、こういう人の方が成功するんやろか。。
良心の呵責とかない方がいい人生送れんの?


⑤は…??
先述の通り。



★ライアンについて
ザ・好青年という雰囲気。
途中、恋愛映画になって、キャシーもついに抜け出せるのかな?てなった。
でも、ニーナの事件の時の動画を見た時、ライアンもそこにいた。
ここはウワーってなるよな〜。

ライアンは、映っている動画を見せた時、自分は何もしていない、その場にいただけだと言う。加担していないから悪くない、てことか。。これをキャシーは“罪なき傍観者”だという。
まさに…だな。

結局、悩んだ末に復讐に向い、ライアンに別れを告げたキャシーにライアンは悪態をつく。
愛してるといいつつ、自己防衛も大事だし、所詮こういうもんなんだろか。
警察に聞かれたとき、何も知らないと答える。
これはキャシーに自分が行くことを言うなと言われたからか、自己防衛…ニーナの時のように自分は関係ない傍観者だというスタンスにしたのか。
まあ、後者だろうな。
罪なき傍観者の鏡みたいな役やった。
良心の呵責は無かったのだろうか。
ただ、結婚式の日、少し物憂いげな雰囲気。これはキャシーを心配してなのか、自分を心配してなのか。
そこに届いたメール。
彼はどう思ったのだろうか…?

でも、キャシーは動画を見なければどうなってたんだろうとも少し思ってしまうね。


★役者さん
キャシー役のキャリー・マリガンめちゃ良かった!
可愛らしい女子女子したお人形さんみたいな顔立ちやけど、女性の参政権を求める活動の話やったり、女性の権利を守るような役をやること多いな。意識しっかりしてる人なんやろうな。
ただ、実年齢より歳上に見える。
同年代の女優さんよりシワとか目立つなぁと。キャシー役だけで無く他の作品でもそう。
可愛らしい顔立ちだから目立つのか、それか、ライトとか修正とかをせず正々堂々としてるからなのか。
まあそれは置いといて、演技はとてもカッコ良かった!

さりげにめちゃ良かったのは、弁護士役のアルフレッド・モリーナ。いい味出してた。思い詰めた表情に鬼気迫るものが。。辛いんだね、てなる。
あの携帯を受け取って、ちゃんと仕事してくれたんだなぁと。
キャシーが託したのは、彼なら罪の意識があるから、キャシーが願うよう行動すると思ったからだろう。罪滅ぼしのチャンスとして彼がこれにより少しでも気持ちがラクになればいいねということなのかもしれないね。


いやーでも、でもなあ。
ある意味スッキリだけど、どうしてここまで?な感じもあるね。
キャシー自身が被害というわけではない、だからこそなのか。
きっと、キャシーにとってニーナは特別な存在だったんやろな。あのペンダントとか見たらそう思ってまう。
あのペンダントを託したのが仕事先の店長というのもね。

ただ、両親が可哀想だ、、、、。
可哀想すぎる、、、、。
辛い、、、、、。

そりゃ、アル含めみんな許せないし、何か罰を受けるべきとは思う。
でも、それなら頭いいんだから弁護士になるとか、そういう方面にパワーを向けられなかったのかなぁと。
自分の人生を歩きながら、というか。

それが出来ない精神状態になってしまったのだろうけど。。むむむむ。


あ、でも、色彩やファッションがポップでオシャレ。
キャシーの服装も化粧もどれも可愛くてオシャレ。
その辺のバランスがまた暗喩に感じてしまう効果も。

よく出来た作品でした!
ゆかちん

ゆかちん