Lila

プロミシング・ヤング・ウーマンのLilaのレビュー・感想・評価

3.7
宇野維正新書「ハリウッド映画の終焉」を読み、第2章「#MeToo とキャンセルカルチャーの余波」で取り上げられてたので、挑戦しました。(ネタ的に自信無かったので避けてましたが、Netflixドラマ「アンビリーバブル」を観たところで脳みそがそのままでした)

視聴者を傍観者にして、ずっと不安を煽られるので疲れます。誰もが少し心のどこかで抱える不安だからこそかもしれないです。とにかく視聴者の過去、記憶、感情に強制的に向き合わせます。現実逃避の真逆みたいな作品です。そのダークさをポップな演出で通すのですが、リビングからキッチンまで、幼稚さの抜けない奇妙なピンクさは狂気じみてました。

特に何も知らずに見始めたので、キャリーマリガンがブリトニーっぽいなあと思いながら見てたらToxicが流れてきて、意図的だったのか!と気づきました。エメラルドフェネル監督のインタビューを見るとブリトニーが好きで、彼女が強いられた事にも重ねてそこの想いはあったんだろうなあ、と。

ストーリー展開や会話はかなりシンプルで驚きは特にないので、アカデミー賞の脚本賞は、社会性と新鮮な題材の扱い方が含まれているのでしょうね。

印象的だったのは、モリーシャノンが演じるニナのお母さん。1シーンしか出てこないですがインパクトがあります。キャシーが前に進まないので、ニナのお母さんの未来も止めていることがよく伝わります。お母さんは前に進みたいのに、進ませてもらえない。

エンディングはなかなかで、テンパったアルのパニック具合はリアルに表現されていました。わたしも怖かった。友人役のジョーはチープ過ぎる役柄ですが、結局そういう友人と連んでいる事の代償も含まれてますね。

事が起きてる時は、とにかくキャシーの両親の事しか考えられませんでした。同じことが繰り返されてしまってる…ご両親の悲しみの方に感情移入してしまいました。

女性は前に進む強さを持っていると信じています。長年連れ添った伴侶が亡くなっても逞しく長生きするところや、新しい事への切り替えは男性よりスパッと未来にいくイメージです。医学部トップで、部屋を見る限りどうやら昔は明るかったであろう賢いキャシーが、友人の死を10年間復讐するまで引きずらずに未来に行く方法はなかったのかと思ってしまいます。(復讐スリラーにならないので本末転倒かもしれませんが)

しかし、キャリーマリガンのお肌や口元が老け過ぎてて驚愕でした(それとも敢えて老けさせた?10年間復讐してたから老け込んだみたいな?)声が低く線の細い彼女だからこそ成り立っていたようなものの、ハマってはいなかったかな、と。

そんなことも相まってか、「華麗なるギャッツビー」で美しかったキャリーマリガンを思い出してました。キャリーが演じるデイジーのセリフ「I’m glad it’s a girl. I hope she’ll be a fool. That’s the best thing a girl can be in this world. A beautiful little fool. (子どもが)女の子で良かった。おバカさんにはればいい。この世で女性が上手く生きていくには、美しいおバカさんでいることが1番」

フィッツジェラルドが書いた100年の時を超え、この考え方に復讐する、伏線回収にすら感じました。
Lila

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