アリちゃん

プロミシング・ヤング・ウーマンのアリちゃんのレビュー・感想・評価

4.0
単純な復讐劇で終わらない。娯楽として消費するのを許さず、観客に当事者意識を持たせるような強さのある映画だった。被害者、加害者、傍観者。自分を重ねる人もいれば大切な誰かを想った人もいるのだろうな。見逃されるありふれた女性蔑視。男性同士の甘やかし、理不尽な社会の中で抑圧されてきた者たちの痛切な叫び。そんな社会に何らかの形で加担してきたかもしれない責任を思うと居心地が悪くなる。だから爽快感はない。ラストなんてずっと苦しい。現実には逆転すらないと思ってしまう。でも少しだけ、観客それぞれのニーナを想った時間の分だけ、何かが変わるかもしれない、変われば良いなと思った。
演出や小道具のひとつひとつ、音楽も良い。主人公の服装やメイクも。宗教的なモチーフも良かった