かりんとう

プロミシング・ヤング・ウーマンのかりんとうのレビュー・感想・評価

4.7
クソ男たちに制裁を
クソみたいな人生に精算を
女として共感しかないメリーバッドエンド。

サイコスリラーにカテゴライズされているが、これは紛れもなくヒューマンドラマだと思う。

主人公キャシーはあの時愛する人の腕の中で「こんな私だけど、幸せになってもいいのかな」と思っただろう。
長年の苦悩の末やっと見えた希望の先に訪れる圧倒的な絶望。
あの瞬間プツリと切れた何かがこちらにもひしひしと伝わる。
そこからの怒濤の展開に、視聴者は一瞬「これってめちゃくちゃムナクソ映画なんじゃないか?!」と不安になる。
しかし最後にはよかったね、と素直に思ってしまった。
成績優秀な幼馴染みのプロミシングヤングウーマン(前途有望な女性)二人は、きっとこれから安息の日々を過ごせるんだな、と。

医大出身の彼女のこと、相当に頭が切れるし薬物の知識もある。
だからこそ短期間にあの完璧なシナリオを完成させ、遂行できたのだろう。
もしキャシーが違った形で制裁の旅を終えていたら、彼女は人生を再建できただろうか。
そうは思わない。彼女が罰を与える相手は、最後は自分自身だったに違いない。
だからあの計画は苦肉の策ではなく、彼女が最高に望んだ結末だったのだ。
仮に彼女の当てが外れたとしたら、「クソみたいな人生」(きっとキャシーは己の人生をそう形容したはず)の上塗りになることは必至だった。

誰に理解されなくとも、カサンドラ・トーマスという人間は太く短い人生を駆け抜けた、最高に格好いい永遠のプロミシングヤングウーマンだった。

追記:ナースコスでキャシーが山荘に向かう道中で流れていたBritney Spears 【Toxic】の弦楽アレンジがめっちゃよかった。