グッチー

選ばなかったみちのグッチーのレビュー・感想・評価

選ばなかったみち(2020年製作の映画)
3.0
認知症となった父と、それを介護する娘が同じ1日を生きるなかで、お互いに違う時間を生きているという感じの構成の映画でした。

監督が自身の認知症の弟の介護体験から着想を得た映画ということでしたが、確かに現実に家族が重い認知症にかかってしまったら、あんな感じの大変な生活になるんだろうなぁというのがリアルな感じで描かれていました。
(この介護の絶望的な状況は新井英樹の「キーチVS」の1話を思いだしました。)

認知症患者があんな感じで、過去の幻想の中で1日を過ごしているというのはちょっと綺麗すぎる話で、現実は「ファーザー」で描かれたような何が現実なのか分からない恐ろしい世界を生きるんだろうと思います。

物語としてはまぁまずまずでしたが、父の2つの過去の回想が時系列である程度まとまって出てくるのはちょっと不自然で、もう少し「ファーザー」でやったみたいに乱脈な感じの方がよりリアリティがあったのかなぁと。
(まぁ父が完全に信頼できない語り手なので、あの回想のどこまでが本当なのかということを考え出すと、それはそれで面白いかもしれませんが)

ラストのベッドにいる娘が、出ていく娘を見ているのはどういう意味だったんだろうと見終わった後、疑問でした。
あれもあれで父を見捨てるというもうひとつの選ばなかった道ということなのかな?
グッチー

グッチー