KnightsofOdessa

選ばなかったみちのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

選ばなかったみち(2020年製作の映画)
1.0
[ごめんパパ、何言ってるか分からないよ] 0点

21世紀のミューズとも言える皆大好きエル・ファニングの最新作は、サリー・ポッターの最新作としてベルリン国際映画祭に登場した。彼女の作品は四度目の登場となるが、やはりエル・ファニングの人気もあって比較的早くから注目度が爆上がりしていた作品だったのは記憶に新しい(蓋を開けてみるとそこまで評価は高くなかった)。本作品は精神障害を患っている男レオとその娘モリーのある一日を描いている。レオの精神状態は分裂しており、初恋相手ドロレスとの結婚生活、ギリシャでのバカンス生活など可能な限り憶えている記憶を繋いで作られた実在しない記憶を幻覚として見続けており、"意識の流れ"のように現実にも度々介入してくる。ドロレスとの結婚生活は二人の息子の死によって破綻しかけており、これは何年も前に別れたモリーの母との結婚生活を暗示している。また、ギリシャでの作家生活はモリーと同じくらいの年齢の女性が登場し、幼い頃に引き離されたモリーとの関係を暗示している。

そこで終わってしまえば技工だけの映画だが、本作品は幻想であるはず(つまりレオが生き続ける限り永遠につづくはず)の挿話にオチまで付け、ご丁寧に答え合わせまでした挙げ句、モリーに"なんて言ってるか分からん"と毎回言わせることで逆にどうでも良さが際立ってしまう。また、途中から現実を幻覚が乗っ取り始めるという描写のために、現実への"介入"が無くなっていき、挿話と本編との繋ぎ目がメチャクチャになっていくのだが、これがあまり上手くいっているとも思えない。つまり、技工だけの映画ですら無くなってしまい、小説でも書いてろ以外掛ける言葉を失くしてしまう。

"誰がなんと言おうと貴方は貴方よ"という聞き覚えのある文句が、このくだらない映画の最後をまとめるように、エル・ファニングの口から出てくる。私は頭を抱えてしまった。映画にする必要がないと思う。残念。
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