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轟音のechizenのレビュー・感想・評価

轟音(2019年製作の映画)
5.0
片山監督の映画には、解り易い登場人物は出てこない。誰もが色々な感情と考えと倫理感に従って揺れながら動く。複雑だ。だから腑に落ちない事が多い。しかし実際世の中、そうやって人は生きている。だから理解出来ないけど、妙に生々しく思える。
今回の映画は正にそんな人物ばかり。話も色々な方向に飛んでいく。謎に謎が重なる。どうやって話を回収するんだ?そんな話。
最後は、そうなるのか…というエンディング。しかし良く考えるとまだ謎は結構残っている。やがて脳内で、自分勝手に話が広がる。後々引きずるヤバい映画だ。
片山ワールド出現。
ラストは監督が語る希望は感じられなかったけど、生命の躍動感と疾走感が猛烈に弾ける。生命そのものが希望というのなら、これはやはり希望の活動写真なのか?

とにかく俳優でもある監督は、俳優達から最高の表現を引き出す。そして引き出された表現を、画として丁寧に焼き付ける。そこが長けている。独特な演出家だ。

監督は長編映画の台本でも、数時間で書き上げるそうだ。しかし書き出す前には、相当に頭の中で人物像への肉付を行っているのだろう。人を描く事にとても拘りを持っているみたいだ。これが複雑で生々しい話を創り上げている。
そこで一気に書き上げる。ざっくりしてでも書き上げる。この一気加勢なスタイルが、熱量の多い作品になる一因だろう。
とても面白いじゃないか!

次回作が早く観たい。
希望は(変な)コメディ。
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