真っ黒こげ太郎

バルカン・クライシスの真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

バルカン・クライシス(2019年製作の映画)
4.0
「戦争は何時だって、人をぶっ壊す」

「これが戦争だ」

…すんません。「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」みたいなお気楽アクションかと思ってました。



1999年6月。バルカン半島南部のコソボ共和国。
セルビア人勢力とアルバニア人の解放軍の武装組織との紛争が激化。
北大西洋条約機構ことNATOはユーゴスラビア(セルビア)軍に加え民間人までも標的にした激しい空爆を行った。
この「コソボ空爆」によってロシアとアメリカの対立は激化の一途を辿る。

そんな中、コソボのプリシュティナ空港を制圧しロシア平和維持部隊が到着するまで防衛する指令がロシアの特殊部隊に下る。
プリシュティナ空港はアルバニア人の過激派によって占領されアジトとして利用されていた。
ベックとシャタロフ率いる特殊部隊は空港制圧に成功するが、空港制圧を知ったアルバニア人の過激派組織は数百人の軍勢で猛攻を仕掛けてくる。

少数精鋭の特殊部隊は空港防衛作戦を展開する。
果たして、平和維持部隊が辿り着くまでに空港を死守することができるのだろうか。




ロシア特殊部隊による空港制圧作戦を描いた、ロシア産の戦争アクション。
1999年のコソボ紛争を舞台に、特殊部隊の空港奪還とアルバニア人過激派軍隊との闘いを描いている。


今回は実際にあった戦争が題材になっているので、ある程度娯楽要素は残しつつも、シリアスに徹した作風になっている。

自分は今作で初めてコソボ紛争について知ったのだが、やや難しい社会情勢や虐殺を交えているので、前半はかなりシリアスなドラマ運び。
本作の出来事を調べながら見たのだが、それでも当時の社会派情勢とかを詳しく知らないと少々キツイかもしれない。
また、これは今作に限った事ではないが主役側の顔や名前もメチャクチャ覚えずらいので、仲間集めの場面やそこから作戦を開始する場面は少々内容についてゆけず、ちょっと混乱した。

と言っても「紛争が続く戦地ではぐれ特殊部隊が再結集し、悪の軍隊から重要地点を守る」的な分かりやすいお話なので、幸いそこまで頭ごっちゃにはならんかったが。
主人公勢は「女スナイパー」「スモーカーの男」「歌好きの陽気な男」と個性的な連中が揃っているし、アルバニア人はまるでテロリストの様な外道として描かれているので、登場人物の善悪の区別は付きやすい方だと思う。

前半は徹底的にコソボ紛争による悲惨な実情を描いてる。
アルバニア人の過激派は徹底的に敵対する連中を襲い、血も涙もなく処刑してゆく。
主人公チームがある程度助けてくれるとはいえ、ひたすらに血生臭く悲惨な現実を突きつける前半は観ていて気が重くなる…。


だがその分後半はアガる出来!!!
空港を抑えた後は作戦を立てて大軍勢を迎えうち、空港を死守する大ドンパチへと発展!!!
後半のドンパチ指数は高く、銃弾が飛び交い、ロケランや迫撃砲が火を噴き、火薬がド派手に大爆発!!!
泥臭いドンパチ好きにはたまらない!!!実に潤いのない世界でいいわぁ…。

また人数で不利な主人公側が作戦を立てて敵を迎え撃ったり、敵側の作戦や援軍が凄まじくてピンチになる等、ひたすらドンパチしながらも戦況が観てるこちらにも分かりやすく、飽きにくい物にしていて楽しい。
話が進むにつれて仲間達も犠牲になってゆくが、最後の散り様は皆キャラが立ってて結構グッと来ます。

最後もシッカリ腑に落ちる終わり方をするので、後味も悪くないと思う。
ただ、主人公側の恋愛描写はいるのかなぁ…と思った。
まぁ娯楽要素も必要だからしょうがないのかもしれんけど。
(そういう意味では「T-34」の方が無理なくヒロインをお話に絡められていたな。w)

ちょこちょこと話の難点やロシア映画特有のクセの強さはありますが、娯楽要素も踏まえつつしっかりと戦争ドラマも盛り込んだ良き戦争アクション大作でした。

「痛快丸かじり!」な内容ではないですが、ド派手なドンパチ好きな人やコマンドアクション映画好きなら観て損はないぞ。