とにかく劇場を出たときに、思考がぐるぐるするほど、終盤にかけて追い込むこうにどんどん飛び出す笑いの数も質もすごい。凝りに凝った斬新な演出はシアターライブだから楽しめる視点もあり、一見の価値あり。特に場面転換で上下に動き続ける空間で重層的に物語を見せる、観客が一歩間違えば事故になる距離感での舞台装置にはびっくり。妖精役たちの幕間などでの妖艶なバーレスクサーカスで一気に異空間を作り出す演出、観客を舞台の世界へ誘い込むシェイクスピアらしさがあっていい。俳優も実力揃いで、本気で恋するシーンは同性異性に関わらず、目ですべてを語るくらい本物の芝居を観れる。ただタイテーニア役だけ異次元の存在感と美しさ、明瞭さ、この俳優勢の中で異彩を放つのは言葉にならない。王妃の気品も有り余るほどで、かつ女の強さも見せてくれ、特に身ぶりや手振りにエネルギーがありながら芸術的に美しい。主演女優のなかでも断トツでドレス姿がはまって綺麗。ボトム役のひとり芝居の爆発力やキャラクターの可愛さも面白い。パック役も観客を味方につける魅力たっぷりで身体はしなやかで、全ての俳優の身体が仕上がっていて、キレキレの動きは清々しい。さすがイギリスだけあって英語がはきはきと発声も心地よい。劇中劇の馬鹿馬鹿しい場面を一番の山場に持ってこれたのも、俳優の力量あってこそだった。
