みてべいびー

ナショナル・シアター・ライヴ 2020 「プレゼント・ラフター」のみてべいびーのレビュー・感想・評価

4.1
NTLをお家で見れるなんて贅沢な試写、ありがとうございました。
ボーダーレスな魅力を持つAndrew Scottだからこそ光る芝居だなぁ〜1939年に書かれた作品を現代的にアレンジして、セクシャリティの多様性を反映することでドタバタ具合に拍車がかかってる。「パレードへようこそ」の監督が演出と知って納得。
仲間内で横行する不倫、過去の恋愛、スターダムが主人公ギャリーのついつい好かれるよう対応しちゃう性格を悩ませる。なんだろうね、言いたいことやりたいことし放題に見えて、本当の自分像からはどんどん遠ざかってしまった40歳の舞台俳優。「僕はずっと演技してる」って自ら豪語してたし本当にそうなんだと思うけど、だとしたらありのままの彼はいつ見せてたのか。パーティー終わりに寂しくて家の使用人たち引き止めたり、最後リズと話してたときの彼なのかな。でもリズもギャリーも素直になれない感じが切ない。前半の会話でギャリーがリズに”I was in love with you longer than I was with anybody else.” 的なことを言ってる場面も好きだった。
たっぷりの皮肉を全力で捲し立ててエネルギー全開のくせに、表情は悲壮感たっぷりだったりするから余計愛おしくなってしまう。確かに愛想尽かしたくもなるけど、なんか目が離せないしほっとけないギャリーのキャラクターをAndrew Scott以上に演じきれる人はいないと思う。しっちゃかめっちゃか人が出入りしてるのに、彼が纏う孤独感が随所に感じられて戯曲のリズム感にも感心した。Overactingって周りから揶揄されるところもメタ的な視点が交じってて面白い。そして役者がみんな上手くて、イギリス演劇界やっぱ圧巻だった。
めっちゃ笑ったのはファンの子がレオタードの中から紙吹雪出してきたとき笑。あとジョンが訪ねてくるときのギャリーの格好(白タンクに柄物のサテンパンツにローブ)がめっちゃセクシーでヤラレた。
度々言及されてたギャリーが過去に失敗した舞台「ペールギュント」も内容知らなかったから調べてみたら、これまた隠喩的な意味がありそうだった。ペールギュントはフラフラ女の人を何人か誘惑しては放浪、みたいな人生を歩んだ後年老いて帰郷して、善人でも悪人でもない中途半端な人間をボタンに溶かし込む謎のボタン職人にボタンにされそうになって、自分の今までの行いを証明してくれる人を探すって話らしい。確かにギャリーは中年になってまで盛んな性生活歩んでて、虚栄心の塊だけど決して悪人ではないし、かといって道徳的に善人とも言い切れない。自分なら演じきれる自信があるのも無理ないね、重なる部分多いから。
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