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ナショナル・シアター・ライヴ 2020 「リーマン・トリロジー」のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

4.5
リーマンブラザーズ150年の歴史

ロンドンのナショナルシアターで上映された演劇。三人の役者とピアノのみで演じるリーマンブラザーズの150年の歴史。ドイツからアメリカのアラバマに移民したユダヤ人三兄弟が衣料品店からスタートし、綿花、コーヒー、鉄道から金融へと、アメリカの歴史と共に栄え、滅ぶまで。資本主義経済の歴史でもあり、アメリカの発展の歴史ともリンクしている。

トリロジーとあるように三部作であり三世代を表している。役者の力強い言葉と演出の面白さ。三時間半で幕間に休憩が2回ある。三人の役者のみで登場人物を演じる。舞台上の事務室は回り、背景のスクリーンにはアメリカに移民し到着した海に始まり、コットンフィールド、ニューヨークの摩天楼等、場面ごとに発展の様子が少しずつ変わっていく演出がわかりやすくてよかった。

二幕まではしっかり観ていて、三幕目1929年の大恐慌を乗り越えたとこくらいからうとうと。同族がいなくなった1969年辺りから記憶が怪しくなった。

役者の声が気持ちよく、ハンガリー系ユダヤ人のグラックスマンが登場したのを観たのが最後、1984年には寝てた。ブラックマンデー1987年も演じたのだろうか。
気がつくと2008年に破綻。

破綻した理由は知っているけれど、リーマンブラザーズの同族以外が経営陣に入ってからの展開は夢の中。
同族がいなくなって買収されたりして、あっという間に破綻していた。

作品は私が寝てしまう前までは丁寧に描かれていた。同族経営の難しさを描いたのではなく、同族経営ならではの忌憚なく互いに意見を言える長所が描かれていた。リスクテイクかリスクヘッジか。ローカル地域への貢献とグローバルな視野。現物取引、信用取引。いくつもの相反する考えを議論し、先を読み、勝ち手を選ぶ。

ユダヤ人としての誇りと伝統も描かれていた。移民として成功したが、苦労した原点を忘れたくなかった三兄弟。その子供たち、孫たちは原点を知らずユダヤ系のアメリカ人へと変わっていく。

ユダヤ人なので日曜日は働くことができて売上が上がる。二代目のフィリップの天才的気質がアシュケナージ的に描かれていたが、先代の三兄弟やその子孫も同様の才能に溢れていたのだろう。三男の息子は政治家になっている。

「お金がお金を生む」と言ったのは誰だったか。あの辺りからリーマン三兄弟の経営哲学と相容れなくなっていったんじゃないか。

彼らが経営から離れてからが破綻への道だったようで、なんと残念な、破綻への道中で、私は夢の中だった。

他のレビューを読むと最後はあっという間だったとある。

大切なところを見逃したが、アメリカの経済の発展を垣間見られたし、やっぱり経営って人なんだなと確認できて本当によかった。

ところで、ナショナルシアターの観客が全員白人なのが気になった。そういうものなのかな。

寝てしまったけれど、面白かったのでスコアつけました。
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