アキラナウェイ

るろうに剣心 最終章 The Beginningのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

4.3
逆刃刀ではない、
まさに斬って斬られる真剣勝負。
其処に不殺(ころさず)の誓いはない。

「おろ?」もない。
「〜ござる」もない。
喧しいだけの左之助もいない。
足手纏いになるだけの薫もいない。

其処にいるのは、1人の人斬り。

色々なものを削ぎ落として描かれた
"始まり"の物語。

うむ。
これは良い。

嗚呼そうか。シリーズ4作を追いかけて、漫画実写化として高水準の作品だと思っていたけど、それでも漫画的な描写に自分は食傷気味だったんだと気付く。

かつて人斬り抜刀斎として恐れられた緋村剣心(佐藤健)の頬に残された十字傷の謎。動乱の幕末期に時を遡り、雪代巴(有村架純)との出会いを描く。

祝言をあげたばかりの夫を剣心によって殺された巴。彼女の心中を察しながら観ていると、これはなかなかにひりひりと心痛むラブストーリーだった。

相変わらず、髪の毛一本のその先にまで、研ぎ澄ました感覚を宿らせる様な演技の佐藤健に最早言う事なし。それに呼応する、まさに雪の様に真白な透明感と静かな佇まいを見せる有村架純もまた良し。

良い役者さんがいるなぁ!と思ったら、新撰組の沖田総司を演じた村上虹郎。他の作品も観てみたくなる魅力だった。

北村一輝演じる辰巳が、寒い雪の中ノースリーブなのを観て、漫画的描写に少し冷める。時代劇然とした無骨な作りに惚れ惚れしていたのに。

終盤の剣心はやられっぱなしだし、アクションとしては物足りないのが本音。

それでも、円環的にシリーズ1作目と繋がる幕切れは見事で、"始まり"を"最後"に持ってきたのは良かったでござるよ。


余談。


今回の最終章二部作を娘と観る為にシリーズ1作目から観せていたら、刀狩(かたながり)の張を演じた三浦涼介くんにどハマりした娘。今度、彼の出演する舞台を友達と観に大阪に行くと言う。

中3女子の遠出は親として心配なので車で送る事にしたが、「推しと同じ空気が吸える!!」と興奮気味の娘よ。

いいぞ。
推しを愛せ。
それがオタク道の始まりだ。