垂直落下式サミング

るろうに剣心 最終章 The Beginningの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.8
剣心が「人斬り抜刀斎」と恐れられていた幕末へとさかのぼり、頬の十字傷の謎へと繋がっていく劇場版。
飛んで跳ねての軽やかステップの殺陣シーンは、ここまでシリーズをみていると見慣れてしまって、それ事態には驚きはしなくなっていたけれど、本作は得物が逆刃刀じゃないというだけで、佐藤健がめちゃめちゃ殺すという違った緊迫感を演出している。
新撰組の出で立ちも、漫画的なヴィジュアルではなく史実に寄せた月代ヘアー。時代の殺伐が伝わってきて、たいへんよろしい。無明三段突きも披露!
代表作の完結編ってことで主演・佐藤健が張り切っており、漫画のキャラクターっぽいおふざけを抑えたシリアストーンで真っ当に時代劇を目指しているのが、また偉い。
るろ剣は、ニューちゃんばら時代劇やってくれてりゃあいいから、演技力なんて期待してなかったのだけど、今回は雪代姉弟がハンパなきベストアクト!
剣心に実の姉を殺された縁が、剣心を憎み、ひいては日本国そのものを恨んで、大がかりな復讐に向かうのは原作通りの流れではあるが、彼の過去とそれに起因する複雑な心情変化を、新田真剣佑は器用に演じきっていて、違和感がまったくない。
漫画だと、縁はなんでそんなに怒ってんのかアンマリ伝わってこなくて、けっきょく志々雄真実より魅力的な敵役にはなり損ねたけれど、確かにあのお姉ちゃんを殺されたら国ごと滅ぼすしかないよなってほど、有村架純が演じる実写版の巴は魅力的だった。
ずっと無表情な巴の顔がちょっと微笑むと、ドキッと驚かされる。人物のほんの少しの些細な仕草に感情を動かされるような演出、すごくよかった。めっちゃかわいい。あれだけクローズアップして欠点ひとつない顔!さすが俺の架純っ!
前日譚にしては、しっかりしすぎで長すぎるので、最終章は二部作ってことらしい。公開順がファイナルときてビギニングということは、これからも過去に落とし前を付けられずに生きていく男への皮肉だろうか。
シリーズを補完しきれていない不完全なところは、こちらで好意的に解釈するくらいには楽しかったのでよしとします。