平田一

るろうに剣心 最終章 The Beginningの平田一のレビュー・感想・評価

4.8
“これで終わる”
“ここから始まる”

和月伸宏さん原作の傑作漫画「るろうに剣心」実写映画化シリーズの最終章かつ前日譚。まだ緋村剣心が「人斬り抜刀斎」として殺戮の限りを尽くした時代に時計は遡り、何故彼が二度と人を斬らないと誓ったか、十字傷の謎に繋がる「喪失」に迫ってく。緋村剣心の人生に影と希望を与えることになった雪代巴を体現したのは有村架純さん。

動乱の幕末。攘夷に大きく揺れる京で後の緋村剣心こと抜刀斎は新時代の為に佐幕派の要人たちを次々と斬っていた。すべては信じる新時代の平和のために、それだけに…しかし何度斬られようと剣心に立ち向かってく清里明良の姿、似非志士の二人組に絡まれてる一人の女を助けたことから、剣心の運命は大きく変わってくーーー。

去年の11月頃から始めてきた実写映画版るろ剣の制覇企画も今回で最終回。でも何で前日譚が最終章?って思いました。

そしたら予告のイメージ以上に物語は哀しく暗く、しかし後へと繋がっていく要素に非常に感銘です。

まず先に申しておくと、本作はこれまでのるろ剣とは違います。過去作が言ってしまえば、自由な世界に解き放たれた最強の剣客たる緋村剣心の贖罪と覚悟の旅路だとします。しかし今回の作品は誰をも決して寄せ付けない緋村剣心の頑強な殻のようになっていて、開幕から閉塞感と圧迫感に溢れてます。人斬りの所業然り、攘夷に揺れてる幕末然り、そこで生きている剣心は、新時代のため一点で心を閉ざし、心を殺し、苦しみ溺れ続けるようで、見ていて呼吸もしにくい気分に、心理にさせてくれました。剣心の殺陣においても逆刃刀を手にする前、真剣なので当然ながら、まさに殺戮模様です。一回剣を振るたびに、人間たちは血反吐を吐いて、肉が裂かれ、肉塊の集合体になっていって、ジワジワと強烈です。全年齢対象なのでそこまで過激じゃありませんが、それでもああまで攻撃的であるとは思わなかったです。

加えてシリーズ一作目から印象的に描かれている清里明良との一件がより克明になっています。相手の命を瞬時に奪える剣心の一斬りに、何故清里明良だけが立ち上がってこれたのか? その謎とイレギュラーでも何でもなかった行動原理が鮮烈に描かれていて、非常に見応えアリでした。しかもその生き様は『伝説の最期編』で剣心が志々雄真実に勝つためには必要だったものと同じだったという、因果というより、奇縁に通じる巡り合わせに唸ります。

そしてもっとも大きな出会い、雪代巴が現れてから、閉塞感や圧迫感が徐々に緩和されてきて、まるで剣心の心境を疑似体験するかのように、ズシンと重い心の扉が開いたように感じました。巴役の有村さんはやはりこういう薄幸かつ内に激しい感情を抱える役をやってる時が一番光っていましたね。自身が後に大きな罪を犯したことを知ったときの悔いや哀しみ、怒りや嘆きをあれほど体現出来るとは…だからこそ剣心へ最期に起こしたあることやその際に発した台詞の深さがもはや感嘆です。

そしてそれを際立たせてる佐藤直紀さんの曲もこれまでのるろ剣とはまるで毛色が違ってます。トーンとしては代表作「龍馬伝」に近いですが、しかししっかりるろ剣としての曲であるのがお見事で、個人的には「白煙」が最高傑作レベルです!

長かった旅路の果てがこれほどの原点だとは…確かにこれだと最初から観たくなるのも納得ですし、一作目連続して観ようかなって思ったしw

さあ、これで準備は万端。
次はいよいよ令和版のノイタミナ「るろ剣」だ!
平田一

平田一