TAK44マグナム

フューリーズ 復讐の女神のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

フューリーズ 復讐の女神(2019年製作の映画)
3.8
美女と野獣


拉致された女性たちが何がなんだか分からないうちに、マスクの殺人鬼によってデロンデロンにされてしまうスラッシャー+デスゲーム系のホラー映画。

スラッシャーというホラーの1ジャンルは、殺人鬼によって複数の登場人物が殺されるというもので、大概の殺人鬼はそのキャラクター表現の一環として多彩なマスクを着用していることが多いです。
「ハロウィン」のマイケル・マイヤーズ、「13日の金曜日」(パート2以降)のジェイソン・ボーヒーズ、「悪魔のいけにえ」のレザーフェイス、「スクリーム」のゴーストフェイス然り・・・
最近でも「ハッピー・デス・デイ」がマスク殺人鬼を巧く活用していました。
また「パージ」では、さながらマスカレードの様相のごとく、大量のマスクマンが街を跋扈するのが定番ですよね。
「正体を隠すため」、「けったいな趣味」など、その理由も様々ですが、いつしか「どんなマスクマンなのか」が作品にとって重要な要素となっていった感があります。

本作に登場する殺人鬼は8人。
まさしく小説のタイトル風に言えば「殺人鬼が多すぎる」なのですが、これは数多く製作されているスラッシャージャンルから頭ひとつ抜け出るための、本作ならではの「武器」なのかもしれません。
そして、その殺人鬼たちは各々が違ったデザインのマスクを着用しています。
しかも、これはお遊びなのかもしれませんが、どのマスクも80年代のホラーアイコンである有名殺人鬼のマスクをリスペクトしたデザインなのです。
ジェイソン風やレザーフェイス風といった具合に、知っている人が見れば気がつくようにオマージュを捧げているのが面白い。
終盤に出てくる鳥マスクは、台詞でわざわざ「フクロウ」と言わせているので、たぶん「アクエリアス」の殺人鬼がベースなのではないでしょうか。
ただちょっと残念なのが、マスクは多彩でも、殺人鬼それぞれの個性を表せてはいないんですよね。
基本、どいつもこいつも「ウガーッ!」ってオノやナイフで襲ってくるだけの記号でしかない。
中の人がどんななのか?
それこそ野獣のように粗野な男なのか?
そういった部分にはまるで言及しないのです。
1人や2人はクレバーなのがいても良かったような気がするんですけれどね。
親しげに手を振ってくる殺人鬼というのはお茶目で斬新でしたけれど(苦笑)

そのぶん、襲われる側である女子たちは性格が皆んな違います。
それが展開に影響を与えるし、ドラマも(多少ですが)生み出しています。
本作では、殺人鬼と被害者(サバイバー)について特殊なルールが設けられていまして、そのルールが本来なら生き残るために協力し合わないとならないサバイバー同士に確執を生む趣向。
単純に殺人鬼からワーワーキャーキャーと逃げ回るだけの話ではないので(いや、絵面はそうなのですが・・・)、そういった凡百のスラッシャーに食傷気味なら是非とも観た方が良いかと思います。

デスゲーム映画としても捉えることができますが、黒幕を含めてゲーム自体がおよそ雑なのが難点。
結局のところ、終盤の種明かしからして「ハンガーゲーム」をスケールダウンさせたように思えてしかたありませんでした。
最近の作品では、アメリカでスマッシュヒットした「エスケープ・ルーム」でも思いましたけれど、そろそろもっと目新しい黒幕で驚かせてほしいものです。


しかしながらゴア描写に関しては、かなり気合がはいっていて素晴らしい!
顔面削ぎ落としや脳天パッカーン、両腕ブッコ抜きに目玉くり抜き、頭がボッカーンなど、かなりインパクトのある血飛沫仕様!で楽しめます。
特に顔面をオノで削ぎ落とす場面は演じる女優さんの必死ぐあいも良いですし、何より特殊メイクがリアル。
本当に巧く出来ています。
それ故に、グロさに耐性のない方は鑑賞前に一考することをお勧め致します(汗)

見た目や度胸からして高校生にはとても見えない女子が主人公だったりしますけれど、殺伐とした殺し合いが普通の女子を最強のリベンジャーに生まれ変わらせる本作もまた、「オーシャンズ8」や「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」と連なる「逆襲する女子」映画なのかもしれません。
もし続編が製作されたら、また観てみたいと思わせるポテンシャルを秘めた佳作でした。


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