ウルグアイのホセ・ムヒカ前大頭領のドキュメンタリー映画を2本続けて観た。
ホセ・ムヒカは地球サミット(リオ会議 2012年)のスピーチで一躍有名になった。資産を持たず、世界で一番貧しい大統領として知られている。
反逆の旧ユーゴ出身のエミール・クストリッツア監督が誘導質問を避けて素顔のムヒカを賛否両論から立体的に撮ったドキュメンタリー。
ムヒカは独裁政治に抵抗し続けた活動家でもあり、10数年投獄されていた。任期中は貧困問題に集中したが、効果が十分に出せなかったことや、闇市場を無くすために大麻を合法化したことへの反発も大きかった。
クストリッツアは祖国の内戦下で、戦争を風刺した悲喜劇の大作を作り、世界の各映画賞を受賞した。父親を内戦で亡くし紛争地で育ったクストリッツアの目線で、革命家としてのムヒカの両面を短い中で映し撮っている。
インタビュー形式ではなく、ムヒカとの自然な語らいと間合い、黙ってしまい口を濁す姿、街中で反対派に罵られ言い返し掴み合いになる激しい姿も撮られている。
ムヒカは、妻ルシア(同じく議員)と思想も行動も一緒。一心同体の夫婦で、苦労を共に分かち合った(妻も投獄された)同士でもある。安らかな二人の笑顔はふつうの夫婦にみえるが、語られる言葉は政治である。一生を政治に捧げている(共に現役議員)二人の人生。原題は『至高の人生』。妻なくしてムヒカなし。ムヒカなくしてルシアなし。有名になったスピーチのような感動する言葉は期待できないが、現代の富裕国では決して見られない闘争する活動家ムヒカが描かれている。
感情に流されないクストリッツァの存在感がムヒカを裸にしている。良作。