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世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカのさのレビュー・感想・評価

3.0
人よりも牛が多い南米の小国 「ウルグアイ東方共和国」
2010年~2015年 第40代大統領のドキュメンタリー。

普通の大統領と比較して圧倒的に違うのは、貧しい人のために自身の給料の9割を慈善事業に寄付し、月収約10万円で生活していた事!職務の合間にはトラクターに乗って農業に勤しんでいたのも素敵✨

「政治家としてトップに選んでもらったなら、レッドカーペットの上を歩かず、市民と同じ暮らしをする」それが資本主義の悪い所であり、共和主義のムヒカの信念だった。

2012年ブラジルで行ったスピーチが話題となり、2年続けてノーベル平和賞にノミネート。
2015年3月に大統領を退任し、ウルグアイの子供たちの教育に余生を注ぎ、貧困層のための教育&生産のNGOに遺産を残す。



実際に本作を観てみると… ジャケット写真に写る、ただの笑顔が優しい フワフワおじいちゃんでは無かった!!若い頃に軍事政権の独裁に対抗し、銀行強盗・誘拐をし、銀行から奪ったお金を貧困層に分配した経験や、体に30発ほど被弾し、肺が3/4になり13年間も投獄生活を過ごしたとんでもない過去があった。ムヒカの価値観はこの独房時代に生まれたと言われている。後に数々の名言を残す事になった。

〜ムヒカの名言まとめ~
◉「私の考えの多くは、独房時代の経験から生まれた。あれがなかったら…浅はかで卑しい人間になっていただろう。成果主義で短絡的で尊大な人間に。おそらく、”成功に目がくらみ、偉そうにふんぞり返ってる"。そんな風に言われたはずだ。もしも、孤独の中で過ごした十数年がなかったらね。そこが、面白いところなんだ。」

◉ 「人類の罪の中で最も重罪、米国が作った金融制度、働かずに稼げるようになったこと」アメリカからお金をもらう代わりに、働かなくても良くなってしまった国民。それでは貧困は解決しない。死の次に不幸な事は労働しない事。」

◉「政治の世界に必要なのは、心は大きく財布は小さい人物だ」
◉「大勢の国民に選ばれたなら、大勢の国民と同じ暮らしをすべきだ」
◉「命を奪うためでなく命を愛するために投資せよ」(環境問題に触れて)
◉「最良のリーダーとは自らが去る時、自分を超える人材を残す物である」
◉「人生で一番大切なことは成功する事では無い、歩むことだ」
◉「人間は同じ石に何度もつまづく唯一の動物だ」
◉「人は好事や成功よりも苦痛や逆境からより多くを学ぶものだ」
◉「経済や物質の進歩はモラルの進歩ではない」
◉「成功した社会主義者は、最後に、資本主義者、個人主義者に寝返った」
◉「13年拘留されていたから慎ましくいられる、悪は時に善になるし善は悪になりうる」
(過酷な投獄経験のおかげで多くを学んだ)


個人的にカッコイイ!と思ったのは、ウルグアイの経済財務大臣就任式での写真。大統領として列席しているのに、サンダル履きにノーネクタイ😂 オバマ大統領、プーチン大統領との公式な首脳会談・外交の場でも信念を持ってノーネクタイ!
「ネクタイは、政治家が嘘を吐き出さないためにするもの」
「ネクタイなんて、首を圧迫する無用なボロ切れ」
ネクタイさえ締めていれば信用されるという欧米的な考え方に反発し、腹を割って話しましょう、フォーマルはやめましょう、という考え方を突き通す姿勢が魅力的!

綺麗事と言われそうな事を、体を張って体現している。ここまで強い信念を人々に伝えようとしてくれる政治家はなかなか現れない。そして、正直どの名言も当たり前のこと言ってるんだよね。こんなにも普通な価値観を持つことの出来ない政治家が多いから、ムヒカが神のような存在になってしまう。失う物は無いと思える程に過酷な経験をしない限り、人間は上に立ってしまうと自分の事しか考えきれないし自分を守ることで精一杯なんだろうな。
さ