たいてぃー

生きちゃったのたいてぃーのレビュー・感想・評価

生きちゃった(2020年製作の映画)
4.0
映画製作の原点回帰がコンセプトとのふれこみ。石井監督のオリジナル脚本でプロデューサーまで兼ねている。初期作品への回帰とも思われたが、そうでもない。「作りたい」の衝動から推し進めたとのこと。役者の渾身の演技もあり、確かに熱意は感じられた。
厚久(仲野太賀)は、妻と一人娘がいるアラサー。配達業者の倉庫でのピッキングが仕事。整列された棚の無機質さに現代を感じる。この仕事はいずれAIに代わってくんだろうって、同僚の嘆きも添えている。
厚久は、起業を目指して親友の武田(若葉竜也)と英会話や中国語を習っている。武田とは若い頃にシンガーを目指していて、路上ライブシーンも入れ込んでる。目指すものがあって、ポジティブに行動を起こしてはいる。だけど、妻の奈津美(大島優子)には、気持ちを言えないでいる。過去の女性問題での疾しさもあって。ひょんなことから、妻の不倫を目撃する。
その後は、二つの殺人事件も入れて、内容としては暗くて重いシーンが連なる。そして、キツくて、心を揺さぶられるラストシーンとなる。
でも、このラストシーンは、中々意味深。武田が厚久同様に泣き叫ぶのは、友情からだけでは無さそう。どうして?ファーストシーンで出てきた畦道を歩く高校生の頃の3人の姿がリフレインされてた。この辺りが鍵かな。
主役の3人の役者は、力がこもった素晴らしい演技。大島優子は完全に脱皮しちゃってる。他では、厚久の両親を演じた嶋田久作と伊佐山ひろ子。長男(パク•ジョンボム)が引きこもりとは言え、このグダグダした感じは何?その後、長男が服役した刑務所前で記念撮影、妙にはしゃいでた。理解に苦しむとこもあるが、あくが強い演技は、本作にマッチしてる。
あと、気になったのは、厚久の元恋人役の柳生みゆ。ナチュラルな演技がいいね。他が濃い〜演技なんでそう感じたかも。今後もチェックしていこっと。