亘

サイコビッチの亘のレビュー・感想・評価

サイコビッチ(2019年製作の映画)
4.0
【愛すべきpsychobitch】
ノルウェーの田舎町ヨービクに暮らすマリウスは優等生。両親からも先生からも期待をされていた。彼は気になる女子レアに接近するため勉強グループを作ることを先生に提案するが、すると彼は先生から問題児フリーダを任されてしまう。相容れない2人のはずだったが、トラブルの連続から2人の距離は縮まっていく。

優等生と問題児が惹かれあっていくという設定の青春映画。このような設定の映画やドラマなどはありそうだけど、本作はサントラも風景も脚本も良い良作。特に脚本で言えばラストシーンまでトラブル続きで、主人公も葛藤を抱えていて、さらにレアとフリーダの間で揺れる心情や優等生の悩みなどどう転ぶか読めない。そこにノルウェーのアーティストたちのおしゃれなサントラが加わりポップで入り込める作品。

[不本意なグループ]
マリウスは成績優秀でクロスカントリーも得意な優等生。両親からも先生からも期待をされていた。中学校卒業が近づき、最後のダンスパーティの相手選びも始まる中、彼は密かにレアに思いを寄せていた。なかなかレアとうまく話せない彼は、先生に1対1の勉強グループづくりを提案する。しかし先生からお願いされたのは問題児フリーダの相手。彼女はクラスに溶け込めず、自殺未遂経験もある少女だった。

マリウスとフリーダそれぞれの背景が描かれたパート。冒頭からフリーダが屋上に上がったシーンが描かれてフリーダが浮いていることがわかる。一方のマリウスは優等生だがおとなしい性格。控えめな性格だし、親にも良い顔しているようだし、ザ・優等生な感じ。そんな彼がフリーダと勉強グループで接点を持つ。この2人の接点の持ち方は、例えば道端で偶然とかより不自然な感じがなくてリアルだと思う。そんなナチュラルな流れも本作のポイントだと思う。

[ファーストコンタクト]
マリウスはフリーダとの最初のセッションに行くが、一筋縄ではいかない。終始フリーダのペースになるのだ。マリウスもがんばってそれについていくが、そこから起きたトラブルはマリウスの真面目な優等生キャラゆえのものだろう。続くフリーダの家でのトラブルは、少しやり過ぎな感じはあるけど、トラブルがトラブルを生みマリウスが振り回されていく様子は不自然さがなくて脚本が良いと思う。さらにフリーダもマリウスをからかい始め2人は接近し始める。

マリウスとフリーだが近づき始めるパート。何度も書くが、トラブルがトラブルを誘発して結果的に近づくという自然さが良い。またマリウス自身女子とあまり話せないタイプなのだろう。少し話すと気になってしまいフリーダのインスタを追ってしまったりする。気弱な主人公が不可抗力で困らせられて新たな展開が始まる。自然で良い脚本だと思った。

[2人の世界]
仲良くなった2人は2人だけで会うようになる。特に印象的なのは夜の学校のシーン。フリーダが自らの境遇を語る。彼女自身家庭内でDVを受けていたからこそ感情をコントロールできなかったりするが、周囲はそれを知らずに変人呼ばわりし、ますます孤立していたのだ。そんな背景がわかる一方で屋上で音楽で踊るシーンからは2人の世界になる。

2人の世界に入り込むパート。やはり夜の学校のシーンでの2人の姿は恋人たちだったし、マリウスもいい子ぶった優等生から飛躍したパートだろう。そしてシチュエーションもよかった。特に冬の夜景をバックした映像も綺麗だし、本作のポイントとなる曲”Strangers”が流れる。その後の逃走劇も含めてまさに2人の関係そして優等生マリウスが変わったシーンだった。

[板挟み]
フリーダと仲良くなった一方で彼はレアからダンスパーティに誘われる。以前の彼にとってみれば願ってた事だけど、今ではフリーダに心が傾いている。だからレアには少し冷たく接する。とはいえ優等生としては、問題児フリーダと付き合うのは世間体も悪いし、レアの心はマリウスに向かっている。だからレアと付き合っていることにする。特にみんなでクラブに入った日のシーンはレアから求め、その後みんなの助けでセックスする。また夜の学校の事件がバレたときには体面を保つためにフリーダのせいにしてしまうしフリーダも再び閉じこもってしまう。

序盤のトラブル続きから、次第に焦点が人間関係に移る。レアとの関係は本来嬉しいはずなんだけど今のマリウスにとっては想定外。マリウスの本心と世間体のズレからマリウス自身もイラついてしまう。しかもマリウスの気持ちが離れたせいでフリーダはまた問題行動起こしてしまうし、彼も責任を抱えてしまったのだろう。しかし終盤の彼の爆発は優等生だった彼からの脱皮のようにも見えた。

[ダンスパーティ]
彼はフリーダに謝りに行くが突き放され、ついにダンスパーティ当日に臨む。レアとペアを組むはずだったが彼の頭にはフリーダと踊った曲が流れる。その後の2人の様子はまさに楽しそうだったし、まさにマリウスが自分のキャラを破った瞬間に見えた。

何よりも印象的なのがラストシーン。”Stranger”の曲も良いし、中盤のシーンが伏線だとわかる感動もある。周囲からすれば気恥ずかしさもあるのだろうが、音楽の力もあって清々しく感じられた。


印象に残ったシーン:屋上でダンスするシーン。ラストシーン。
亘