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一度も撃ってませんのHIGHINLETのレビュー・感想・評価

一度も撃ってません(2020年製作の映画)
3.4
佐藤浩市や豊川悦司、妻夫木聡ら
名が通った豪華俳優陣が五月雨式に次々に現れておっと驚かされる。

石橋蓮司演じる世間から忘れられた作家は、妻思いで大人しく気弱。
毎朝、妻が出す味噌汁に入ったシジミの身を吸い上げている様は何の威厳もない。

ところが、妻のもとを離れた途端にハードボイルドを気取る。
その凄みのある風貌から“伝説のスナイパー”とも噂される。
重厚感の声、そして佇まいは本当に渋くてかっこいい。

でも、性根は優しいので人殺しは本物の殺し屋に任せて、殺害時の心情や終息の顔色を取材して小説の題材にしようとする。
病的だがなんとも生真面目に見える。

そんな作家は夜な夜な隠れ家的なバーに通い、格好だけハードボイルドを通し続け自分の世界に浸る。

そこに集まる仲間、桃井かおり演じる元ミュージカルスターは癖があって艶っぽくて人懐っこく魅力的。

他にも、元警察の重鎮やメキシコで戦術を磨いたバーのマスターなど、若い頃に一度名をあげた人たちが酔いに任せて会話にならないうわ言を並べている様子が寂しいだろうけど、楽しいそうだった。

自分を偽って見栄を張り続けることは、若い奴から見たら「ダサい」と思うが、自分の信念を貫いて踏ん張る精神力が羨ましく、
ウソを問いたださず共有できる仲間がいるのは居心地がいいんだろうなと思った。

この映画は一応コメディーというジャンル分けをされているらしいが、大笑いできるところはない。

ただ中国系ヒットマン役の豊川悦司と石橋蓮司が、銃を構えて睨み合い、それがいつまでもいつまでも続く冗長な間が間抜けで、笑えた。

映像は夜の街が時折スローになり黄昏のように味があった。
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