ちゃんしん

罪と女王のちゃんしんのレビュー・感想・評価

罪と女王(2019年製作の映画)
4.5
怖いくらいに人間の二面性を描写してると思う。
作品の中での設定による数々の対比がその問題の深さをより強調していて面白い。
さらには中年と呼ばれる世代の誰もが持つ悩みや欲望というものの描写も良い。

女王の如く、自分が絶対だと信じて生きてきた主人公…。
表向きは正義を振りかざし、弱きものを助ける人格を持つ弁護士という姿だが、その裏には絶対的な自己中心型の成功意欲を持つ独裁者としての顔を持つ。
所詮は自分が全てに於いて優先されるべきことであり、自己の保身の為には平気で嘘もつくし、罪も犯すし、証拠隠滅も計る性格…。

作品の中で子どもたちや青年が大人たちから受けた悪なる仕打ちを、自己の保身の為なら平気でやってしまう大人の欺瞞は、一体、何時から始まるのだろうか?
純粋さ故に傷つく子どもたちに比べ、厚顔無恥に自身の保身の為に欺瞞に突き進む主人公の姿は、あまりにも現実として存在する大人社会を映し出している。
欺瞞に慣れた大人たちはそれが当たり前だと感じ、罪の意識すら感じることはない…。
欺瞞を当たり前だと認識し、罪を受け入れ、自身を正当化する大人たちはたくさんいるだろう。
目の前の利害に囚われて、本当に守るべきもの守られなければならないものが壊されることは、本来、自分があるべき姿をあまりにも程遠い姿に変えてしまう。

何を守るべきなのか?
人として大切なものは何なのか?
を深く考えさせられる作品。
なかなかの出来だと思う良作。
ちゃんしん

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