彦次郎

カフカ「変身」の彦次郎のレビュー・感想・評価

カフカ「変身」(2019年製作の映画)
3.2
朝起きると虫になってしまった青年と家族との関わりを描いた不条理変身譚。原作はフランツ・カフカ。本作は1910年代当時を再現した(といっても室内がメインだが)割と原作に忠実な作品となっています。
ジャケットからすると『ザ・フライ』や『仮面ライダー』みたいな人間ベースの昆虫のように思われますが本編では原作通り芋虫のような不気味な昆虫でした。
昆虫と化したことで一家の稼ぎ頭が次第に疎まれて冷遇される悲惨な話ですが”カフカはこの作品の原稿をマックス・ブロートらの前で朗読する際、絶えず笑いを漏らし、時には吹き出しながら読んでいたという”(wikipediaより)ということなので作者としてはドライな笑いを追求したものだったのかもしれません。父親と上手くいってなかったらしいカフカが家族といっても極限までいくと他人であるということを風刺したのかもしれませんし解釈はいかにようもできるところは原作同様。ただ昆虫のビジュアルが出てきてしまったので想像の余地が減り「これくらいなら見世物小屋にでも出して金儲けしようや」と考えらえてしまうのが残念なところです。
個人的にはホラー方面にアレンジしラストは家族の誰かが虫に変身して残りの家族が絶叫するみたいなベタなものを期待してしまいましたが本作の終盤も妹(かなり美人)の結婚を考える両親の清々しさで完結。原典に忠実なので文章を読むのが嫌いな方は本作から入っていくのも一興といえましょう。
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