雷電五郎

クローゼットの雷電五郎のレビュー・感想・評価

クローゼット(2020年製作の映画)
3.7
妻を交通事故で亡くしたヨンは一人娘のイナとともに郊外の家へ移り住む。事故以来、塞ぎ込んでしまったイナに良い環境をと思い選んだ立地だったが若手に仕事を奪われる焦りからイナを突き放すような態度をとってしまったある日、ヨンが仕事へ出かけている最中、イナは姿を消してしまう。
という韓国のホラー映画です。

導入やあらすじはホラーの王道ともい言えますが、中盤までに話がサクサクと進み、イナを取り戻すために怪しい霊媒師ホ室長の協力を得て奮闘するお父さんの姿が描かれます。

大体このような設定ですと主人公のお父さんか娘さんが死んだりしますが、この作品ではホラー要素としての悲劇に焦点を当てるのではなく家庭内で起こる子供への虐待という社会問題を背景にすることで、子供を蔑ろにする親達の残酷さを描写しているように思います。

一心に親の愛情を求めながら親から裏切られて悪霊と化した子供達。ヨンがイナを助け出すため異界へ踏み入ったラスト、母を求めて泣きじゃくる少女の霊を抱きしめ「本当にごめんな」と詫びるシーン、あの一言で許してしまえる程、子供にとって親の愛は非常に大きく嬉しいものと分かるのがよかったです。

また、胡散臭いことこの上ないホ室長が一見インチキ霊媒師かと思いきや、やり手の霊媒師として活躍するのも面白く、登場人物が絞られているからこその特異なキャラづけが生きていました。
洋画の場合は一方的に悪魔にしてやられたり、神父が役に立たなかったり、退魔の儀式で台風でもきたのかという勢いで甚大な被害が出たりしますが、炎が尽きるまでに異界から戻るというタイムリミットがあったおかげで、大袈裟な演出はなくとも緊張感が出て最後まで楽しめました。

退魔の儀式が日本や中国に近しく、あまり目にしたことがない様式だったのでとても新鮮でした。霊幻道士を思い出しましたね(笑)

怖いだけではなく、ヨンが自身の在り方を認め償い、娘のために命を賭けるという展開が最後まで手に汗握って面白かったです。
主演の俳優さんが「神と共に」という人気作品に出演していたことを踏まえてのメタネタ的会話にも笑ってしまいました。

ホラーで男性同士のバディという組み合わせも洋画ではあまり見ないもので個人的には最後のオチまで満足できる一作でした。
ホラーのためのホラーではなく物語のあるホラーで非常に面白かったです。
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