Jeffrey

我ら山人たちのJeffreyのレビュー・感想・評価

我ら山人たち(1974年製作の映画)
3.8
「我ら山人たち」

本作は1974年に名匠フレディ・M・ムーラー監督が、自身の故郷であるウーリ州の山岳地帯を捉えたドキュメンタリー映画で、このたび紀伊国屋から発売されたBDボックス(本作はDVD)を購入して初鑑賞したが素晴らしい。変わりゆく山岳地帯で暮らす山人たちの生き方と精神世界に迫った内容は彼の最大の傑作「山の焚火」へと受け継がれるもので、民俗学的なテーマや共同体の閉鎖性などを描いた「マウンテン・トリロジー(山3部作)」の一つである。本作はロカルノ国際映画祭で国際批評家賞を受賞しており、ムーラーの故郷、スイスのウーリ州を舞台に変わりゆく山岳地帯に住む山人たちの生き方と精神世界に迫った傑作である。物語の説明を話すとこのような感じである。

映画は地域によって3つのパートに分けられている。第一部の舞台はゲシェネンの渓谷。トンネル建設によって自然環境のバランスが崩れ、長年営まれてきた牧畜営業が破綻しかけている。第二部の舞台シェヒェンの渓谷では、伝説的な高原の牧畜営業が維持されている。ここでは、直接民主制によって多くの政治的選択が行われている。第三部の舞台マデラーナ渓谷のプリステンでは、牧畜経営だけでは共同体の運営が難しいため、住民の半数はよそへ働きに出ている。対象となる地域だけでなく、民俗学的なテーマや、共同体の閉鎖性など「山の焚火」に直接的につながる多くの要素がこの映画の中に見られる。村人たちの語りが画面のオフで聞こえるが故に、無言でカメラを見据える彼らの眼差しが、訴えかけるように観客へ投げかけられる…と簡単に説明するとこんな感じで、112分の作品の中で山国の人間が山間に住むのは、我々のせいではないと訴えかける情念のようなものが伝わる。
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