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コールヒストリーのMypageのレビュー・感想・評価

コールヒストリー(2019年製作の映画)
4.2
映画だった
ちょっとまだこの作品よすごさが解けない。ただ菊池さんの声と言葉がいいだけなのか。映像はそれを邪魔していないという意味で。もちろん編集はめちゃくちゃ巧みなんだけど。
監督のアフタートークでこの作品は「2010年代の総括」と述べられていたが、まさにそのように、広範で多元的な論点を自在に行き来する。大学生まで過ごした地元とかつての日々を思い返す「彼女」と、東京からやってきて「声」の存在を知り、聞き書きのような作品を発表する「美術家」。二人の視点で語られる、逡巡、動揺、葛藤。
誰かの言葉は、その捉え方次第で、形が変わって響き方も変わる。「あとから気づく」という「声」の性質が、現在と過去、人称性を等価に結びつける。

菊池ゆきさんの声で聴くと、これは台詞なのではなくて詩なんだと思えて、それがこの映画の形式がドラマであることを決定的に退けているんだけど、だけどところどころ、喫茶店で話すところでテーブルの上のアイスコーヒーが映されたりとか、移動中に新幹線の車窓とか、美術家のティーチインとか、映像とともに「シーン」を構成するように立ち上がる部分があって、一人語りの言葉を追っていくと、ドラマの輪郭が浮き上がってくる。
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