み

コールヒストリーのみのレビュー・感想・評価

コールヒストリー(2019年製作の映画)
3.1
jig theaterにて。

ここ最近、いや、考えてみると4年ほど前からそうかもしれないが、心が落ち着かない。ザワついた感覚がする。
なぜザワつくのか。その理由に最近ようやく気がついた気がする。好きなもの、興味のあるもの、知りたいことが多すぎる。多すぎて、知るたび楽しい。面白い。
そして、自分の居場所が分からなくなる。

興味の趣く方向だけでない。
中学の時に両親が離婚して、母に連れられそれまで住んでいた土地を離れたときから、私の帰る場所についてはよく考える。
しかしそれはいまだ見つかっていない。
そして、見つけるのではなく、つくっていくものなのだろうなと、ここ最近は思うようになってきた。

そう、自分の居場所は、作っていくものなのだと。

事前情報無しで鑑賞したものだから、鑑賞後にこの話が全てフィクションだと聞いて驚いた。
巧妙すぎる。
そして、これは、ネタバレになるのか…?微妙だけど、シアターのオーナーさんから解説(解釈?)を聞いて大納得したのが、最後のシーンから最初のシーンに繋がっているということ。
美術家の、用意したものではない声が、彼女の声に繋がったのか…。
すごい、すごい……。巧妙すぎる。
手持ちや定点の違いとか、同じ場所でも見ているものが違うだとか、ほかにもまだたくさんの仕掛けがありそうだ。巧妙すぎる…。

それから、(一応作品を作る人間として)終始居心地の悪さを感じた。
批評に対する反論だとか、作品作りの理由付けだとか、純粋なアートだとか、美術にとって本来要らないはずなのに、現代を生きる我々にとっては必要となってしまっているもの。
言い訳という声が自分の中でもいちばん身近かもしれない。

自分の納得のいかなさ。
それを表に出す恐怖。
荒を突かれるキツさ。

でも、そういう自分と向き合うことこそが「声探し」なのかもしれない。
み