レインウォッチャー

ノロワのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

ノロワ(1976年製作の映画)
3.0
絶海の孤島に建つ古城を舞台にした復讐劇。弟の仇をとるため、モラグ(G・チャップリン)は女海賊団にスパイとして潜入し、ボスを倒すチャンスをうかがう。

通常であれば、舞台演劇で効果的な手法と映画のそれは区別されるべき。しかし今作では境界線の癒着を推し進め、それでも映画として成立し得る水平線のギリギリを探し求めているよう。

たとえば、殺したり殺されたりする際の大仰な立ち回りやへっぴり腰にも見えかねないアクション。
たとえば、劇伴が流れているかと思いきやカメラが回るとその音楽(※1)を演奏している人物がいる(これは前作『デュエル』でもちょっとあったやつ)。
たとえば、ある人が部屋に入ってきて掲げた灯りがそのままそのシーンの照明になる(そして他の人物はそれに気づかない)。

このようなある種いびつなアプローチと、映画的な背景やカットが同居する。ブルターニュの開けた海や空や太陽というロケーションもまた、とても映画的。
アンバランスな違和感を、映画の「滑稽さ」や「ファンタジー」の要素としてどこまで呑みこんでパワーに変換できるか?といったチャレンジに思えるし、ある程度成功しているとも思う。

さらに、劇中では登場人物が他の人物の前で寸劇を演じたりするシーンもあり、しかもその内容は直前に映画の物語で起こった出来事の再現だったりして、幾重ものボーダーを生み出しては壊す冒険が試みられている。

わたしはこのあたり体系的に分解できる知識を持たないためちょっと悔しくはあるのだけれど、ゴダールのメタ視点や茶化しかたとはまた異なる、映画にも演劇にも存在する「段取り」的な要素との関係性を再構築するような手法がおもしろいと思った。

やはりどうしても上記のような「手法」が目立つ作品で、物語映画としてのエモーションはなおざりともいえる。
ただ、幸い女海賊団がみなさん美女ぞろいなので観てられる。テカリ強めな衣装が目を引くけれど、なんとなくそれぞれのイメージカラーがあるようで、アイドルグループっぽくも見えてきたりして。

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※1:3人組のバンドが常にどこかしらにいて演奏している。彼らのエスニック・瞑想・インプロヴィゼーション・室内楽みたいな音楽(そんな棚はない)はとても好き。