くわまんG

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のくわまんGのレビュー・感想・評価

4.0
あらすじ:命を懸ける理念はあるか。

三島由紀夫と全共闘の討論を紐解いてみたら、正面衝突の潰し合いどころか人情味たっぷりの対話になっていたよ…というドキュメンタリー。

対話の相手を、自分と同様に「世界を良くするために本気な人物」と認識した瞬間、敵ではなくなるんですね。熱した学生1000人は、リアルタイムでこれを教わります。対等なディスカッションを貫き通した三島由紀夫のパーソナリティは、歪んでいようが極めて成熟しており、その心はかなり冷静かつ穏やかに動いていたことでしょう。

命よりも大事な理念があったという点で、三島由紀夫の人生はハッピーエンドだったのかもしれません。他人に迷惑かけた落とし前を、自分なりにつけたという点でも破格だったと言えます。

一方、他の当事者たちがどういう人物であったかは、まだわかりませんね。彼らはエンディングを迎えていないのですから。ただね、暴力を意図的に行使した人間が、その過去を振り返るにあたり全く謝罪しないと(編集のせいかもしれませんが)、多くの視聴者が反感を持つものです。しかも、騒動後は学歴相応のブルジョア階級を享受していたとなればひとしおです。根っからの善人でもなく、客観視も反省もできない人を待ち受けているのは、悪くなる一方の世界と悼まれない死ですからね。どうか、彼らがそういう人物として亡くならぬよう願いますよ。

ある感情とある感情があるタイミングで接触した際、「今なら死んでもいい」と当事者に思わせてしまう妖しい時空間が発生しますが、アレを一滴も漏らさず捉えるような三島由紀夫の小説に魅了された僕は、大学生の頃ほぼ原理主義者でした(苦手な作品も多かったけど)。もちろん今でも大ファンですので、フラットに見ることはできませんでしたわ。ただただ、ご冥福をお祈りするばかりです。