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夢のアンデスのkyokoのレビュー・感想・評価

夢のアンデス(2019年製作の映画)
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宇宙や海から俯瞰し、地理と歴史を結びつけながら犠牲者たちへの鎮魂歌のような体をなす前二作に対して、今作は子どもの頃から変わらぬ姿で祖国を見守るアンデス山脈に投影された、グスマン自身の強烈な郷愁と二度と戻れぬことへの寂寞の思いが色濃い。
始まってしばらくはグスマンはじめ画家や彫刻家などがアンデスへの思いを語り続けるので、「これはまさかのアンデスオンリー……?」と思ったけど、後半は独裁政治終焉後の30年余りの間、悪夢がまだ続いていたことを知らしめる。男女を問わないデモ隊に対する激しい制圧行動、ピノチェトが強行した新自由主義が生んだ国民の経済格差。

グスマンの亡命後、自身も逮捕の危険があるにも関わらず、チリの闘いを撮り続けたカメラマン、パブロ・サラス。彼がいなければグスマンの映画もなしえなかった。「私はここに残り撮り続ける」と語る彼の顔に一ミリの迷いもない。果たしてグスマンはこれをどんな気持ちで聞いたんだろうな。
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