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バトル・インフェルノのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

バトル・インフェルノ(2019年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

幼馴染のマックスとドリューは、リアルタイムで悪魔祓いを行う「除霊の時間」という番組を毎週ネット配信していた。マックスが神父役で出演し、ドリューが構成を考えるヤラセ番組だった。視聴者数はうなぎ登り、インチキグッズの販売も好調で2人は大儲けしていたが、あるとき、何と本当に降臨した悪魔を相手にすることに…。

人間に取り憑いた悪魔を払う「エクソシスト」の儀式を題材にしたオカルトホラー。
題材そのものはホラーの定番だが、主人公が本物の聖職者ではなく、真っ赤な偽者というのがユニークだ。
舞台はほぼYouTube用の撮影スタジオのみ。
明らかに低予算のシチュエーションスリラーだが、次々と繰り出される悪魔の理不尽な要求に「どうやって切り抜けるのか?」とハラハラした。
現代的なオカルトホラーの佳作である。

ある撮影日、取り憑かれた人間役の俳優が姿を現さず、ドリューは婚約者のレーンに急遽代役を頼む。
なんとか無事に撮影はスタートするが、レーンの様子が何かおかしい。
台本を無視して、まるで本物の悪魔に取り憑かれたかのように振る舞う。
すると突然、スタッフの1人が火だるまになって焼け死んでしまう。

混乱するマックスたちをよそに、視聴者数は急激に増加。
世界中の視聴者相手に、ヤラセなし、ガチの除霊バトルが配信される。

かつては神学校に通い、神父を目指していたようだが、今は人々の信仰心を金儲けの道具にする、罰当たりな偽物神父のマックスは、果たして本物の悪魔と戦えるのか?

聖書を掴み、悪魔祓いの呪文を唱え始めるマックス神父。
しかし、レーンに本物の悪魔が憑りついたなら、正しい名を呼びかけねば、悪魔祓いの効果はない。

呆れ顔の悪魔は視聴者に「神父が何をすれば彼女を救える?」と意見を求める。
視聴者のリクエストは面白がって無理難題ばかり。

ここから偽神父の「公開処刑」が始まる。
神ではなく、悪魔が嘘つきのマックスに罰を与えるのだ。
悪魔はストリップを選択し、マックスに要求。
拒否すればレーンを殺すと脅されて全裸に。
視聴者は数十万を越え、ドリューが全裸になったマックスの映像を切ろうと、機材を操作しても悪魔の力で全く反応せず、マックスの恥ずかしい姿は全世界に中継されてしまう。

逃げようとすると、天井から照明機材と扇風機が落下。
悪魔は回るファンに手を伸ばせ、砕けた照明のガラス片が落ちる床を歩けと強要。

さらに悪魔は、バチカン認定と銘打った番組のオフィシャルグッズは、真っ赤な嘘だと詐欺商法を暴露するよう要求。
ドリューの婚約者であるレーンと肉体関係があった過去まで暴露させられる。
終いには、友情が壊れて罪悪感に苛まれるマックスに首を吊れと要求する。

悪魔を祓うエクソシストのはずが、良いように悪魔に弄ばれるマックス。
しかし、これまでのエクソシストものでは、悪魔は神に愛されるような清らかな人間を苦しめていた。
なぜ、俗物のマックスを相手にするのか?
果たして悪魔の狙いは何なのか?
物語が進むうちに疑問が浮かぶ。

マックスが責められる一方で、ドリューは悪魔辞典のサイトを使い、言動をヒントに悪魔の名前の候補を絞っており、遂に悪魔の本名が判明。
皮肉にも罪を全て告白して、清らかな心を取り戻したマックスは、呪文を唱えて反撃に出る。
苦しめられた悪魔はレーンから離れ、炎で焼け爛れたスタッフの死体から、その本来の姿を現す。
この悪魔の造形が宗教画に出てくるようなクラッシックな風貌だがなかなか良く出来ている。

2000万近い全世界の視聴者が見守る中、カメラに向かって呪文を唱えた悪魔は忽然と姿を消す。
配信を見ていた人々は悪魔に支配される。
彼らは凶器を手に取り、身近な人々を襲い始める。
世界のあらゆる場所で殺人が発生。
女性が恋人を、警官が同僚を、アメリカ大統領の息子は父親を殺す…。
悪魔の本当の狙いは、視聴者だったのだ。

放送後、突如世界には犯罪やテロの嵐が吹き荒れ、人々が恐怖する報道で映画は終わる。

信仰心を忘れた偽者の神父に、悪魔が「天罰」を与えるかと思いきや、配信を見るような(少なくとも神の御技に興味のある)敬虔な信者たちに悪魔が取り憑くという、ヒネリの効いたバッドエンドに脚本の妙がある。

もっと人間ドラマを丁寧に描いたら、化けたかもしれない。
次々と公開処刑されるマックスの様はさながらコメディだ。

とはいえ、聖書や教会といった神聖なモノではなく、俗物の巣窟であるSNSやネットを利用するなんて「さすがは悪魔」と妙に感心する現代的なアップデート。
新時代に対応したエクソシスト映画である。
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