段ボール箱

マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”の段ボール箱のレビュー・感想・評価

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マルジェラ本人がマルタン・マルジェラというブランドについて語るドキュメンタリー。

冒頭、白衣を纏ったマルジェラの手が紐と一輪の花をマネキンの首元にかけ、ゆったり結ぶシーンが印象に残った。紐が装身具になる瞬間を見た!と思った。

作中で彼はデザイナーというより服の研究者だとの言及があるが、まさしくその通りで、どこからが衣服か/衣服でないかの境目を探るような創作過程が面白い。
ゴルチエのアシスタント時代から始まり、有名なタビブーツ、四隅を縫い取ったタグ、染料を入れた氷のネックレスがうまれる過程の話など。
(染料を入れた氷のネックレスは、何年も前に大学の同級生が課題としてそっくりそのままアイデアを真似したものを提出していたことを思い出した)
折しも模倣について本人の口から語られるシーンがあってよかった。

ディーゼルに買収されたものの、彼のものづくりは巨大資本とは結果的に相性が悪かったという話、引退後は絵を描いたりして自分のペースで幸せに生きているという話。

メディアに顔を出すことのないまま引退した本人は、終始手元と声しか映らない。
どんな場面でもあまり大仰な言い回しをしないのが好ましい。こういうシンプルな人だったとは知らなかった。

映画館には(当然かもしれないが)マルジェラのアイテムを身につけている人を多く見かけた。