tomtom

パピチャ 未来へのランウェイのtomtomのレビュー・感想・評価

3.3
 舞台は90年代のアルジェリア。政情不安の中、宗教原理主義の風潮が高まり、ヒジャブをしない女性達が襲撃される事件が相次いで起きる。そんな中、女大生達は不穏な時代に平和的に抗うため、ファッションショーを開く計画を立てる...というストーリー。

 学生の頃に会ったアルジェリア人の留学生は丁度この映画の主人公のように、とても自由闊達な女性で、身なりも西洋人そのものだった。それから何となく漠然と、アラブ諸国の中でも開放的な方なのだろう、と思っていただけに、強烈すぎる女性差別の描写はかなりショックだ。
 特に印象に残っているのは、主人公の試みを危険と考える多くの男性達が冷たい言葉を浴びせる中、一風リベラルに思える人でさえ、アルジェリアを去ろうとしないことに苛立ちを見せるシーン。彼女達には何の罪もないけれど、これまでどおりの自由な生き方を謳歌するためには、確かに移民に出るのが一番早い。でもそれは、生まれ育った祖国を蝕む暴力に諦め、逃げ出してしまうことも意味している。
 個人と社会の関係における難しい問題が、如実に描かれている、示唆するところの多い良い映画だった。
tomtom

tomtom