くもすけ

パピチャ 未来へのランウェイのくもすけのレビュー・感想・評価

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主演のネジュマ演じたリナ・クードリが素晴らしい。親友ワシラ役にミスキーナのシリーヌ・ブテラ、他キャストもとてもよい。

ハイクという布を丹念に撮っている。アルジェリア紛争のときによく使われていて、その白が原理主義のヒジャブの黒と好対照をなす。インタビューがあった。
https://fansvoice.jp/2020/10/30/papicha-mounia-meddour-interview/
みんながハイクという正方形の布を纏っていたのは、60年代ですね。いまの若いアルジェリアの女性でハイクを身に着けている人は、あまりいないと思います。ただ、祖母や母の時代には、タンスの中にはハイクはありました。言ってみれば、家族の遺産のようなものでしょうか。ウール50%、シルク50%の正方形のハイクという白い布。これは本当は、アルジェリア社会にとってはひとつの遺産として、タンスの中に存在しています。

ハイクの巻き方についてお母さんが教えてくれる。
未婚なら前髪出して、既婚なら出さず、存在を忘れてほしければ片目だけ出す。60年代の話こラシニコフは両手に2丁隠せて、太ももを強調して歩けば男たちの口笛が聞こえた。(お母さん口笛吹けてないよ)

監督脚本製作はムニア・メドゥール。映画監督の娘として生まれフランスで育つ。ドキュメンタリーをいくつか作ったあと今作が初長編。3年かけたオーディションでデビュー間もないリナを主演に抜擢する。彼女もやはりアルジェリアからフランスに移った経歴を持つ。二人は2022「裸足になって」で再タッグ組んでる。

90年代アルジェリアは暗黒の時代と言われた内戦で数万人の犠牲者を出した。監督らのように金かコネがあれば逃げ出すだろうがあえて残る人たちもいて、という話。日常的にさらされる抑圧の連打で頭が沸騰しそうになるが、なかば狂ったように布にしがみついて仲間と連帯し乗り切ろうとする。

この国の映画は「アルジェの戦い」くらいしか見たことない。話される言葉は仏語とアラビア語?のちゃんぽんで、音楽もいろいろ聞いてたみたい。劇中ラップもやっててこの辺気になるが何もわからず。80-90年代第二の都市オラン生まれのライという音楽がワールドミュージックとして世界を席巻する。その代表的な歌手だったCheb Hasniは94年原理主義者の凶弾に倒れる。

パピチャは「愉快で魅力的で常識にとらわれない自由な女性」という意味のアルジェリアのスラング