Shin

ミナリのShinのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
3.9
予告の段階ではあまり注目していなかったが、アカデミー賞6部門ノミネートと謳われると、やはり観ずにはいられない。オープニングで知ったのだが、A24の制作なんですね。

1980年代、アーカンソー州の農場へ移住してきた韓国系移民の家族のお話。

本作でリー・アイザック・チョン監督を初めて知りましたが。1978年生まれで、アーカンソー州の小さな農場で育った韓国系アメリカ人ということで、自身の体験が作品に反映されていることが窺える。

序盤、夫のジェイコブと妻のモニカの職業はひよこ鑑定士ということで、孵卵場で働いている。鶏のメスだけを選び取っている様は、あたかも一家の女性の強さを暗示しているかのようだ。

最初は物語が誰を中心に動いているのか把握するのに少し時間を要したが。主人公は一人ということではなく、なるほど家族が主人公という訳だ。

タイトルに水辺で育つ『ミナリ(せり)』とあるように、生きていく上で欠かせない"水"が重要なポイントとなっている。信じ難いダウンジングによる地下水探しから始まり、高い水道代、川からの水汲み、雨天の無さなど。水が豊富な日本ではちょっと考えられない。

特徴的だったのが、何気ない日常の中に、緊張感と笑いどころをうまく織り交ぜているところ。息子のデイビッドが一人で外を出歩けば心配になり、隣人ポールの行動(信仰心)は怪しいし、祖母スンジャの不可解な視線は不安になる。川でヘビが現れた際、スンジャがデビットに「隠れている方が怖い」と語った話とリンクしているように思われる。

かと思えば、デイビッドのオネショのくだりや、おばあちゃんらしくないスンジャの言動で笑わせてくれるという具合で、演出が巧みだ。

当初は異なる目的だったジェイコブ(農場のため)とモニカ(病気の息子のため)であったが、アクシデントを機に、家族が団結して同じ道を歩んでいく。ひとつの部屋で川の字になって眠る様が印象的だ。

終盤にジェイコブが地下水探しのダウンジング(旧約聖書にもある神の意志)を信じるようになったことは、キリスト教への信仰心が厚くなったと考えられる。

やはり開拓者精神やキリスト教への信仰が根付いているアメリカ人にとっては、心に響く映画なのだろうなと想像してしまう。












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