まーしー

ミナリのまーしーのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
3.0
アメリカの田舎町に移住してきた韓国人一家が、荒れ果てた土地を開墾しながら生活していく姿を描いた人間ドラマ。

いずれは農業が軌道に乗ると楽観視する父親。
そのような現実は訪れないと悲観視する母親。
父親の夢・意地と母親が向き合う現実とがせめぎ合う。
そんな夫婦の衝突とは距離を置きながら同居する、口汚い祖母。
そして、両親の顔色を窺いながら生活する2人の子ども。

一見バラバラにも思える家族が紡ぎ出す、さりげない日常。
食事、お風呂、夫婦喧嘩、子どものイタズラ……多くの人にとって既視感のある風景。
だからこそ、遠い異国の地のドラマとは思えない。身近な物語のように感じる。

ただ、主人公一家には、逞しさだけでなく、陰翳も見え隠れする。生き抜こうとするエネルギーに加え、どこか淋しさも付きまとっている。
荒地を黙々と開墾する父親、周囲に頼らず子育てをする母親、友達を多く持たない子どもたち、英語を話せない祖母——他者を頼らない、頼ることのできない姿は、果敢とも無謀とも映るだろう。

そんな彼らにもたらされた奇跡。
タイトルの「ミナリ」は、韓国語で植物の「セリ」のこと。ラストでその意味が理解できる。
ストーリーに起伏は少ないが、家族の温かみを感じられる作品だと思う。