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ミナリのandesのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
3.5
妙な感覚に陥る映画。海外で評価が高いのは宗教的要素やアメリカ開拓史というバックグラウンドからか。とはいえ、家族ものとしても悪い映画ではない。
ジェイコブ(ヤコブ)、デイヴィッド(ダビデ)、ポール(パウロ)など名前からしてキリスト教的な側面があることが暗示されており、わかりやすくポールが十字架を担ぐシーンもある。そちらには明るくないので、個人的には「ふーん」くらいなのだが、詳しい方が見れば様々な「発見」はあるだろう。
感心したのは、アジア系移民ものだが、極端な人種差別的描写(ないことはないが)は避け、「家族」にスポットをあてていること。ファミリーが新天地で「根を張る」話にしては「ミニマム」で「静的」なのも新鮮。
祖母が来てからはスリリングで、国籍的な背景=アイデンティティを感じさせるキャラでもある。ひとかき回しする役割で、結果的に家族はまとまるが、所謂幸せな結末ではない。結局、何かを得られれば別の何かが失われ、重荷が移っていくのである。
表面的には家族奮闘記なのだが、妙に示唆的でカタルシスを得にくい作風。どの解釈でも、膝を打てないモヤモヤ感はある。劇中、“役に立たない”ヒヨコが燃やされるシーンが印象的。
さて、同じ年にアカデミー賞を取った「ノマドランド」は、定住を放棄した白人女性の物語。この辺の対比は面白い。
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