けん

MINAMATAーミナマターのけんのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
3.3
監督 アンドリュー・レビィタス

なぜアメリカ人のレビィタスによって作られ、
なぜジョニーデップが主演し、
なぜアメリカでは公開されなかったのか? 

観終わった後に興味をもったんだ。

製作は環境問題への意識の高いジョニーデップから持ちかけられたみたいだ。監督のレビィタスは、幼い頃、主人公のユージン・スミスの写真集MINAMATAを見ていて、衝撃を受けていたので、製作に至ったみたい。

作品の中で、1枚の写真は1000の言葉に値するって言葉がでてくるけど、ユージン・スミスが魂かけて、50年前の水俣の悲惨な実情を写し取った写真が、ジョニーデップとレビィタスの心を揺れ動かして、この作品を生み出すことになったんだね。

映画では説明があまりされていないけど、実際、ユージン・スミスは、チッソの労組従業員(チッソが雇った暴力団の説もある)に暴行を受け、脊椎を折られ、片目を失明している。それでも水俣を世界に発信することを諦めなかった。ジョニーデップは、アル中のいい加減な男を演じていたが、もっと熱い男だったんじゃないかと思う。

しかし、この映画もアメリカではお蔵入りしてしまった。これは、ジョニーデップの妻へのDV問題が足枷となってしまったみたいだね。アメリカで上映されていれば、もっと話題になっていただろうに、残念、、

しかも、水俣に対して、リスペクトを込めてつくらた作品であるにも関わらず、水俣市は、この映画への後援を拒否したそうだ。理由は、水俣病を過去のものとしたいためだそうだが、それでいいんか?

5年前、水俣市に行ってチッソの工場周辺を歩いてみたが、ここで公害があったのか?と思わせるくらいに美しい海と公園になっていた。世界的に問題視された公害であったため、水俣病を過去のものにするための金が集まったからだ。

現住民の人達にとって、それは素晴らしいことではあるのだけど、だからこそ過去の痛ましい記憶を事実に近い形で描いたこの作品には、水俣にとっての大事な価値があると思うんだけどな。
けん

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