ボギーパパ

MINAMATAーミナマターのボギーパパのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.0
劇場2021-66
かつてはここも、高度成長期に公害で名の知れた「川崎」TCにて鑑賞。

これまでジョニー・デップの映画って何となく苦手で敬遠していたのだが、本作はテーマもテーマなので三作連続の社会派作品鑑賞となりました。

写真家ユージン・スミス氏と水俣との関わりを通じて、今なお続く水俣病ひいては世界の公害被害にフォーカスを当てたもの。

冒頭は老い行くフォトジャーナリストの限界、諦観、挫折を光と影、紫煙と酒で表現。

ところがある時、世界の片隅で引き起こされた世界最大規模最悪の公害被害を垣間見ることにより、再びジャーナリスト魂に火がつく。そして現地で人や生活と触れ合い、様々な妨害や懐柔があるものの巨悪に立ち向かう。といったある種、定型的な作品ではある。

ジャーナリストの目に映ったのは、そこで生きる、生きざるをえない人々の生活と苦悩。
このパートは日本映画界の屈指の俳優が名演。特に加瀬亮が素晴らしい。真田広之、浅野忠信、國村隼それぞれの名演が熱い。自分が小学校入るか入らないかの頃の話であるが、実際知らないことが多すぎる事を痛感。同時代を生きていながらこれは恥ずかしい事だ。せめて本作を観ることができたことは心から良かったと思う。

そして今、朝日新聞デジタルで「素顔のユージン・スミス」という特集をみているが、今作におけるジョニー・デップ!これはよく似ている。彼の助手・石川さんが撮ったものらしいが、ホントに似てる(^^)
役づくりが凄い!
のちに妻となるアイリーンに睨まれるとすごすごという事を聞くコミカルな部分も好感が持てる。

そして何より劇中繰り返される
「撮る者は魂を吸い取られながら撮る」
という言葉が刺さった。その覚悟を持って臨むからこそ、ああいった写真が撮れるのだと心に響いた。

また、各所にフラッシュバックのように様々な写真が挿入される。その一枚一枚に込められた写真家の撮ることによって削った魂の質量を、感じることができる作品。重要なシーンには何となくだが青い色調が用いられているかとも感じた。元々の水俣の海の色に対する悔恨の意味か、印象的であった。
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