Aya

MINAMATAーミナマターのAyaのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
3.5
#twcn

問題定義映画としてとてもいい出来。
いい映画だと思う。

全てが「程よい」塩梅。

テーマとなる水俣病の主張がそこまでエグく描かれず、主人公となるカメラマンのユージーン・スミス氏のパーソナルな部分も本人以外は映らないので、今の荒んだ生活になるまですべて主観で語られる。

事実がどうであれ映画にした時どちらかの主張が大きいとバランス悪いしウザいからね。

すげえなこの映画。

なんなら熊本弁が全然分からなかったから日本語だけど標準語か関西弁の字幕つけてほしいと思ったw

出てくる日本人役の人がほとんど日本人。
アジア人じゃなくてちゃんと日本人。
にも関わらずロケはセルビア。

スタッフは名前みただけでちょっと何人かわからない人が多い(Åがついてる人多いからロシアか北欧系かなぁ?)ちょっとどこから調達してるのかわかんないんですけど、同じ人が色々な仕事兼任してたり意外にミニマム。

そして出演俳優や監督がエグゼPを務めることでギャラを抑えて利益を再分できるシステムなので結構豪華キャストながら製作費を抑えてますよね。

序盤はアート映画かと思ったw
だってカメラの動きがすっごいんだもん。

上から、間近から、長回し、ロングショットから動かして人物を捉える時の寄り方、差し込む太陽光etc...正直最初はぐわんぐわん振り回されてクラクラしたしちょっと酔ったw

さすがあらゆる国で映画を撮ってきた名カメラマン、ブノワ・ドゥローム。

そのよくわからないながらあなたしか撮れないよね!的なカメラワーク凄いです。
本気で吐くかと思ったw
(映画のこういうの弱い)

しかもBGMは荒んだジョニデに似つかわしくないほどおされなJAZ。

この映画は主人公のジョニデがJAZが好きな設定だから至る所でJAZがかかるのですが(マイルス・デイビスしか知らない私w)それ以外の音楽(BGM)も抑え気味でいいです。
さすがRyuichi・Sakamoto!!

あと白黒のフィルムカメラってとこにも重きを置いて作られてるのでガジェットフェチの人も音とか色とか堪らないと思う!

ジョニデって分からないのが超いいのにアイリーンとのアレコレみたいなの入れられるとさっと現実に戻らされますよね・・・いや実話なんだからここに罪はないとはいえね。

これスミスさんご本人の写真見たらまぁそっくりなの!
凄い。

まぁ、もちろん私はヒロユキのために足を運んでるわけなんですけどみなさん知ってました?

真田広之さんて60歳なんですって!

私、結婚したいと思ってるんですけどめちゃくちゃ歳上じゃないですか?!

高確率で先に死んでくれる・・・さらに好き度増しましたよ!!
いや、逆になんで私と結婚してくれないの?って感じでどんどん理由を削っていきますからね?
言葉通じるし!

この映画のヒロユキ60歳くらいに見えたよ・・・何言ってるのかほとんどわかんなかったし、肝心なシーンのジョニデの「言ってること訳してちょんまげ」って言われてかなり簡潔に響く訳してくれるし(たぶん)。

全然いい・・・結婚して✨ってなりました。

加瀬亮さんも出てるやん!
すごく老けた感じでよかったっす。
久々に"永遠の僕たち"見たいっす!

全体的に過剰すぎないのがこコレ系の問題提起映画にしては珍しい。

過去すぎるから?ってわけでもなさそう。
だって水俣病の患者さんてまだ全国に全然いらっしゃるし。

いわゆる指定難病(公害)
私、仕事が医療事務なので水俣病の実態よりも医療費(公費請求/具体的なレセプトの記載とかw)などについて考えながら見てました。

多分、ヒロユキをはじめとするチッソ社への抗議活動をされてる方々は"哭声"観てないんだと思うんですけど、その人逆らったらガチでヤバいから!

そんな水銀を垂れ流してドヤ顔してるチッソ社の社長役の國村隼さんの英語がビックリするほど上手だった件w
空いた口が塞がらなかったw

ガス・ヴァン・サントに出てた加瀬亮さんよりもアスガルドの民のタダノブ・アサノよりも上手かったw
※アスガルドはブリティッシュ英語です

いや、でもこれで考えるとヒロユキと加瀬亮さんが國村隼さんを詰めるあのカット・・・すごいなんか・・・凄いモノを見た、って感じしたよ。
震えがくる。

日本人しか映ってないし話されてるのは日本語なのに全然日本の映画っぽくないカットだった。
※この映画は合作なのでそもそも純日本映画ではアリマセン🇺🇸🇬🇧🇦🇪🇯🇵相乗り

エンドロールの今も続いている公害(人災)に苦しんでいる人々の姿は本当に胸が痛いし、ちゃんと福島原発も入ってて嬉しかった。

この映画、思った以上に胸に刺さりました。
悲惨さを突き詰めて描けばいいというものではない。
ショッキングなモノを提示するのも手かもしれない。

でも今、映画にするならベストな塩梅。
伝えることに長けた監督だな、と思いました。

映っているモノと語りはほんと重要。
センスが良いというかバランス感覚が適切というか。

しかも制作会社は監督自身のレーベル。
今後もこのような問題定義映画を作ってくれることを願っております。
あわよくば福島原発を取り上げてほしい。

心に響くかどうかは人それぞれですが、真田広之さん目当てでつまり"モータル・コンバット"を観に行くのと同じテンションで劇場に足を運んだような私の心には深く残りました。

この映画、昨年映画祭でかけたときにはボロカスやったのにいざ一般公開したら絶賛の嵐でよく分からん?と思ってたけど百聞は一見にしかずですはい。


日本語字幕:髙内 朝子
Aya

Aya