空海花

MINAMATAーミナマターの空海花のレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.1
世界的写真家ユージン・スミスが遺した写真集を原案に、ジョニー・デップが製作・主演を兼任し映画化。
監督はアンドリュー・レヴィタス。
彼は映画プロデューサーのほか、彫刻家、脚本家、俳優のマルチアーティストでニューヨーク大学教授でもある。
13歳の時、ユージン・スミスの「Tomoko in her bath」をライフ誌で見たことが脳裏に刻み込まれ、長いこと「ミナマタ」映画化構想を温めてきたという。 そしてそのことをデップに話すと二つ返事で賛成してくれたとのこと。

ユージン・スミスはアメリカを代表するフォト・ジャーナリスト。
15歳の時に撮った、干上がったアーカンソー川の写真が「ニューヨーク・タイムス」に掲載される。
「ニューズウィーク」から「ライフ」誌で働き、戦場カメラマンとしても活躍。
写真とキャプションで物語る“フォト・エッセイ”で高く評価される。
だが経営陣とは対立を繰り返し退社。
体調も優れずスランプ真っ只中。
そんな彼の元を訪ねたのは日本人女性アイリーン(美波)
熊本県水俣市にあるチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しむ人々を撮影してほしいと頼まれる。

想像以上に良かった。
ジョニー・デップの演技が素晴らしい。
ジョニデではないみたい。
実はこの後ユージン・スミスの『ジャズ・ロフト』を鑑賞したが、ジョニー・デップに似ていることにまたビックリ。
本作で寄せたのか元から似ているのかわからなくなるほど。
『ジャズ・ロフト』を観ると、この映画に出てくる数々のエピソードが彼の人物像として真実だったことがわかる。
もちろん映画としての脚色はあるようなのでそこは留意されたし。

現像中に扉に貼る、張り紙の文言や
アルコールとアンフェタミン
沖縄戦のフラッシュバック…etc.
アイリーンは「25年前のことなのに?」と言ったが、トラウマになるには十分な体験だったとか。
また、我を通すタイプだが、子供達のことを考えるとお金に目が眩みそうになるところなんかも。
それらは次回レビューに回すとして、
そんな弱い面もしっかりと見せつつ、
途中逃げ出しそうになりながらも
写真を撮り続けるジーンにいつしか心が奪われていた。
そして彼に心を開いていく村の人たちの姿。
同じ村でも様々な立場の人達がいて、それ故の難しさも伝わってきた。

また素晴らしいのは実際の写真の群
そしてそれを撮影する場面
その写真は目を伏せずにしっかりと眼に灼き付けた。

真田広之や加瀬亮、國村隼など日本を代表する俳優陣の演技も良く
チッソ本社の社長役の國村さんが、非情ながらも内心では揺れているような演技が特に良かった。
加瀬亮も別人に感じた。
美波の美しさや声も良かった。
「ライフ」編集長のビル・ナイも良かったな。
キャストやスタッフの大事なことを伝えなければいけない使命感をひしひしと感じた。
音楽は坂本龍一。
前半の抑えた調子から、徐々に高まっていくような。
ラストエンペラーに似ている部分があったが何かシンパシーがあったのか。

日本での撮影の許可が下りず、海外で撮影されたという。
「かつて写真は魂を奪うと恐れられたが、撮るほうの魂も奪う」
写真と共に、映画の画力もまた、その魂を伝える芸術品だ。
素晴らしいカットが多く、写真家の映画ということを感じ取れ、そこが日本ではないことは気にならなかった。
アメリカでの公開が待たれる。
全世界で公開されなければ意味が半分になってしまう。

「Beautiful」完璧だ
その台詞に激しい共感の波が押し寄せた。


2021レビュー#186
2021鑑賞No.417/劇場鑑賞#86


カットの素晴らしさにパンフ購入。
ちょっと写真集の様相があって良かったです。
サントラも欲しくなるし、ユージン・スミスのファンになってしまい写真集も欲しくなってしまった。
むむむ、どうしよう(笑)💸

この上映に先駆けて、他の水俣作品も上映、鑑賞に意気込んでいたが、体調不良週と重なり1本も観れず。貴重な上映だったのに…🥲

(一席空けだけれど)隣のお姉さんが写真が移り変わる度に顔を覆って泣いていた…
空海花

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