ナミモト

MINAMATAーミナマターのナミモトのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
3.8
滑り込みで、上映が終わってしまう前に映画館で観ることができました。
あらすじなどは省いて、所感にとどめますが…、外国人からみた日本企業や企業役員達の悪質さや隠蔽気質、熊本の住民たちの心理的な閉塞感(語弊があるかもしれませんが、最初は家族を撮られる事を拒否する心理、外部者を拒むコミュニティに属する人々の持つ心理的な閉塞感)を自然に描いていたなぁ、と観賞後すぐ、率直に感じました。

九州の海は、くすむような、深みのある水色を帯びたしずかな海は、こんなにもきれいか…と目を惹きました。特に、再度ジーンが日本を、熊本を訪れた際の列車のシーン、海岸線に沿って走る列車を遠方から捉えたシーン、最高ですね。

話は逸れますが…、沖縄の辺野古基地移設を強行した際に、沖縄の青い海に土砂が暴力的に流し込まれる、その土地に住む人々の声を無視して、抑えつける、あの公的な暴力は、本作で描いた熊本の海の時も行使されていたわけですね。地元の人々の心の一部と言ってもいい、生活や命のすべてがそこから始まる海を汚す暴力は、そこに住まう人々の命の尊厳まで冒涜し、殴り殺す、絶対に許されない行為です。だからこそ、本作では熊本の海を、水を美しく撮ることは不可欠だったのですね。
止む事ない環境汚染は、人間が経済活動を優先させることをやめない限り続いています。地球のどこかで誰かが苦しんでいるのに富裕国が、企業が、搾取をし続ける、これは異常事態であるはずなのに、危機感は共有されない。
傷つき、生きる尊厳までも冒涜された、弱い人々の声は、過去においてどれだけ無視され、今なお、その声はないことにされ続けているのか。
本作は、水俣病のおさらいで終わらせてしまってはよくない。水俣の問題は依然として今の問題であることを考えなければならないことを突きつけている作品です。

また、アイリーンにちょくちょく注意されるジーンや、ライフ誌編集長に電話でどつかれつつ、日中から酒を呑むダメな部分も合わせ持つジーンは、年齢をかさねたジョニー・デップでないと演じられないな、と。その満足度はとても高かったです。
史実との一致不一致が、判断つかないのですが、水俣病を、海外の目線から描いたという点でも好印象なのではないでしょうか。
個人的には、加瀬亮のブチ切れる演技が大好物で…(なので、アウトレイジも大好きです)、加瀬亮の熊本弁も完璧で、そのシズル感にも浸りました…。
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