みーちゃん

MINAMATAーミナマターのみーちゃんのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
3.9
ユージン・スミスのことは、過去にいくつかドキュメンタリーを見て、戦争写真家時代に沖縄戦で大負傷してニューヨークに戻り、そこで"楽園への歩み"を撮るに至った経緯に感動した。そして、晩年の(59歳没)水俣での約3年に渡る撮影について、もっと知りたいと思っていた。

"Tomoko and Mother in the Bath"もそう。あんな写真は、シャッターチャンスにされ恵まれれば、或いは、被写体にさえ近づければ撮れる。というものでは無いことだけは、素人にだって分かる。だから、一体どうして彼は撮れたのだろう?なぜ人々の心に訴えるのだろう?と、ずっと記憶に残っていた。本作を観て、その理解が少し深まった。

写真を現像するための、フィルム用暗室の描写も良い。

今のデジタル化された工程とは全く異なるものであるということを、改めて胸に刻み、想像することができたし、暗室がただの作業場ではなく、写真家にとってアトリエのような存在であり、それを住民達が心を尽くして水俣の地に再現してくれたこと、火事で消失してしまったこと…。それらの意味や、ここで起きたこと、今も起きていることが、言葉ではなく感情として伝わってきた。

ジョニー・デップのオーラを抑えた表現と、距離感を保つ冷静な演出に好感が持てた。ビル・ナイの存在感や、加瀬亮はじめ日本人キャストも良かった。