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MINAMATAーミナマターのharukapiのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
3.5
ユージン・スミスが写真を撮ったことは知っていたけど、あんなにも闘争の渦中に巻き込まれていたことは初めて知った。撮ることだけは勘弁してくれと言っていた家族のお風呂での写真を許してもらえるほど彼らのなかに入り込めたことがすごい。し、それほどの切迫感を水俣の人たちが感じていたという苦しみの深さを思い知る。水俣の辛いところは、同じ共同体のなかで分裂が起きているということもある。加害者であり、被害者でもある。チッソという大企業にすがらないと職がないなかで、そのチッソの存在によって家族の命が脅かされる。

『朝に魚、昼に魚、夜に魚。
水俣湾岸の住民たちは、つまるところ魚を食べていた。貧しいがゆえに魚を獲り、貧しいがゆえに魚を食べる。』

写真家の桑原史成氏の言葉。つつましい生活をしていた人々を襲った病気は、富める人間が造り出したもので、経済白書が“もはや戦後ではない”という言葉を使ったまさに1956年に最初の患者が現れた。

作品としては、最後に勝訴で終ったのが綺麗にまとめすぎている。いまだ闘っている人がいることは注釈でつけてもらいたかった。水俣湾がとても美しい映像で胸がいっぱいになった。お母さんの子守唄?の鼻唄シーンに、ぐっときて、石牟礼道子の“苦海浄土”をもう一度読み直したくなった。
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